第2話
「ばあちゃん、帰ってんのか?
探したんだぞ!携帯に何度も電話してんのに。
あのなぁ、携帯、見なきゃ持ってても意味ないんだぞ」
戸を開けるなり、先生に向かってイラつきながら話す男の人
びっくりして振り返った
「これ、たっくん、お客様よ。大きな声で」
「あっ、すみません」
私に気付くと慌てて、落ち着いた声に変わった彼
「こちらの方が荷物を持って送ってくださったの。あっ、お名前お聞きしてなかっわね?」
「はい、河瀬美桜と申します」
「美桜さんね、綺麗なお名前だこと」
「ありがとうございます。こんな我が儘な年寄りに付き合っていただいて」
「そんな…とんでもありません。こちらこそ、あつかましくお邪魔させていただいて。あの、私、そろそろ」
「まぁ、そう?そうですね。おまりお引き留めしてもね。たっくん、送って差し上げて」
「大丈夫です。お気遣いなく」
「そういう訳にはいきません。年頃の御嬢様を一人でお帰しするなんて」
「たっくん、早く、車でしょ?」
「はいはい。
美桜さんでしたっけ?行きましょう。
ばあちゃん、言い出したら聞かないから」
「たっくん!」
私は先生のお孫さんの"たっくん”とやらに送ってもらうことになった
見た目は軽い感じに見える彼も話すと言葉遣いが丁寧で…
何より声が耳に残った
おばあ様似なんだね
心地よくて、
優しくて、
安心する深い声
「あの~、たっくん、さん
図々しく送っていただいて、ごめんなさい」
「いいよ。こちらこそ、ばあちゃんが世話になったんだし。
たっくんね(笑)拓海って言うんだ
東條 拓海です。
ばあちゃんは小さい頃からあー、呼ぶんだ」
「そうなんですか」
「敬語とかいいよ。普通にしゃべってよ」
でも、そう言ったきり、彼はあまり話さなかった
もう少し、その声を聞きたいと思ってたのに…。
車内に微かにする彼の甘い香水の匂いが
当たり前の1日の終わりにほんの少し色をつけてくれた
そんな気がしてた
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