11.羽ペン

 ファンタジー世界を映像化すると、必ずといっていいほど出てくるのがこの道具。そんなわけで、私はいつしかこう思い始めていました。「羽ペンを使えば、古代人やファンタジー世界の住民たちの気分をあじわうことができるのではないか」と。こうして羽ペンに魅了された私は、それを自作することに成功しました。

そこで、今回は“羽ペンとはどのようなものか”や“羽ペンの使い心地”などを紹介していきます。



 「羽ペンの概要」

 現実の世界では5世紀から19世紀まで使用された筆記具であることから、人間とのかかわりはかなり深いです。1500年近く使われたということは、それほど合理的かつ実用性の高いものだったということでしょう。

 羽ペンの作り方としましては、まずガチョウなど、大型の鳥の風切り羽(翼後方に位置する、一段と立派な羽のこと)を抜いてきて、根元を切ります。ちょうどストローの根元のような形になるので、次にその円を半分に切り、出っ張った半円を万年筆の先の形状に削っていきます。そして次に……あ、この先はすべて万年筆のペン先を真似すればいいのでした。省略しますね。

 やってみれば意外とできます。よほど手先が不器用でない限りは“使える”羽ペンが出来ると思われます。そこから考えると、羽ペンが長く使われてきた理由の一つには「制作が容易である」というのもあるのでしょう。


 ちなみに、上に書いてあるようなメンドクサイことなんかしなくても、一応抜いたままの羽も筆記具として使えなくはないです。しかし、やはりインクがすぐ切れるので、実用的ではないですね。具体的に言いますと、大文字のアルファベット用のを3,4本書くとすぐにかすれてしまう程です。

 こうなると、加工前の羽をもちいたものはガラスペンなどに似ていますが、そちらはメンテナンスが必要ないので、羽ペンは加工した方が賢いやり方です。



 「羽ペンを使って」

 さて、いよいよレビューです。私が作ったのはガチョウとキジの羽を用いた羽ペンで、前者はかなり大きく、硬い一方、後者は比較的柔らかいものとなります。

で、早速この二つに優劣をつけていきましょう。両者では、圧倒的にガチョウのペンが使いやすいです。理由は、「硬いから」と「太いから」というもの。この二つの特徴は、私が感じた“羽ペンの欠点”を補ってくれるのです。

(前の文でちょろっと描きましたが)以下にその欠点を書いておきます。


・メンテナンスが必要

・インクが(すぐ)無くなる

・持ちにくい

・不潔


 の三つでしょうか。

 先ず、羽ペンには適度なメンテナンスが欠かせません。鉄やガラスと違って、ペン先となるのが羽軸根なので、キジやカラスなど、柔らかい羽を使うとかなり面倒なことになります。おそらく一ページ書いたくらいですぐに先がつぶれます。丸まったり、曲がったりした場合、書き心地が悪くなるのでその時はもう一度ナイフで成形しなくてはなりません。

 次に、インクの問題です。が、こちらはしょうがないような気もします。ボールペンやカードリッジ式の万年筆など、私たちが普段使いしている筆記具はすべて間断なくインクが補給されるものの、昔はインクは「付けてあたりまえ」だったのですから。

 三つ目の問題はかなり深刻です。羽は総じて細いので、長時間使っていると手がつかれてしまいます。例えるならば……、そうですね、DSのタッチペンを使って般若心経を書いているような気分になります。もちろん、ガチョウなど大型の鳥の羽であれば、多少は疲れが軽減されますが、何かで補強するなどしないかぎりは根本的な解決にはなりません。

 最後の問題はあまり気にならないかもしれませんね。特に古代人は。でも、個人的にかなり気になったので、こちらに載せることにしました。汚いということで、水で洗おうとすると羽が美しくなくなってしまうのですよね。かといって洗わずにいるのももどかしい……。結局私は太陽光線で殺菌をしたのですが、この点は今でも大きな欠点の一つです!


 もちろん、羽ペンにはそれ以上の利点があります。第一に、先述した通り「古代人やファンタジー世界の住民たちの気分をあじわうことができ」ます。そして、何と言っても書き心地が独特で、癖になります。紙面を削るように、ガリガリと文字を刻んでいく……、まるで耳かきのような心地よさです! また、欠点としてインク補充の問題を挙げましたが、実はあれ、個人的には気に入っています。「つけペン」の部類に入るのですが、いちいちインクをつけなければいけないという作業の多さが、逆に快感なのですよね。今はこうしてワープロで文字を出力しているわけですが、こうしたハイテクの真反対に位置するような要素ですから、そこに魅了されたのかもしれません。

 加えて、忘れてはいけない利点はズバリその「ビジュアルの良さ」にあります。筆記具としての実用性を考えるのならば、明らかにカラスペンや金属製のつけペンが優位です。にもかかわらず今もなお、羽ペンは私たちの興味を惹いてやみません。それはつまり“羽”というナチュラルな素材だけを活かして作られた羽ペンは、いわば身近にある「自然の象徴」として、現代人の思考に組み込まれていることを意味しているのかもしれません。

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