12.ジェンダーと社会的種族差
ジェンダー観、フェミニズム、男女の別。社会的性役割……。
こういうことは学ばず・考えずに触れると痛い目に合うので、この作品の中でも一二を争う難しい項目だろうと思われます。しかし、あなたが性に対して先入観を持たず、きちんとしたジェンダー観と「現実」を知っているのなら、作品にうまく入れ込むことができるかもしれません。
男女の別がある以上、どんな世界にもジェンダーは存在します。もしあなたのファンタジー世界に性別という概念があるならば、ジェンダーも「ないとおかしいもの」なのです。
「ジェンダーとは」
先に初歩的なことをお話しましょう。ジェンダーは「社会的に形作られた男女の差異」のことです。日本で言えば男子は学ラン、女子はブラウスと言った区別です。また、何も目に見えることだけではありません。ジェンダーは例えば言葉遣い(男言葉・女言葉)や香りなどにすら影響しています。
ちなみに、ジェンダーの大半は男女の肉体的差異から生じたものではなく、社会全体が暗黙のうちに方向付けを行って形成されたものです。「女の子みたいな走り方」といわれて、とてもぎこちない走り方を連想する方もいるかもしれませんが、それも体の違いとかではなくて、単に意識の産物なのです。
「ファンタジ―世界にジェンダーを」
ジェンダー自体は単なる男女の差異であり、差別ではありません。ただし、そこに人間の意思が介入すると、差別になりうるのです。でも、ファンタジー世界ですら差別が横行しているなんて言う悲しい設定は、よっぽどのことがない限り避けたいものです(リアリティを求めると、残念ながら差別もないとおかしいのですが)。
うまくファンタジーとジェンダーを融合させるためには、まず単なる社会的・文化的な差異として導入するのがいいでしょう。楽しい例を挙げれば、ドラゴンに乗る竜騎民族で、男性は海を移動する海竜に乗り、女性は空を移動する飛竜にのるとかいう区別があるなど。そういえば、現実世界にもファンタスティックなジェンダーがありまして……、カリブ海のとある島なんですが、男はカリブ語を話して、女はアラワク語を話すという言語がジェンダーとなった事象もあります。ただその場合、「なぜそうなったか」が伝承などでもいいので設定されていると、ますます深みが増すでしょうね!
そうそう、オメガバースなんかを世界に導入する場合は、少なく見積もっても六つのジェンダーがあるでしょうから、一つ一つに細かい設定を盛り込んでいたら時間がいくらあっても足りませんね……。
「社会的種族差」
社会的種族差という語は、私がさっき勝手に作りました。ファンタジー世界で追加されうる人間以外の知的生命体(ドワーフやエルフ、オーガなどの種族)に着目したとき、ジェンダー以上に差異ができるのではないかと考えたためです。
どういうことかといいますと、現実で男女というもともと些細な変化しかない存在にすらこれほど大きな違いが生まれているのなら、生物学的にも文化的にも大きな差異がある人間とそのほかの種族の間には、社会的差異が生まれて当然ということです。
言ってしまえば異文化間の違いですが、この異文化というものも、私たちが経験しうるものはすべて同一種族間(人間)のものです。こうなると他種族間の違いがどれほど未知数なのかがおわかりでしょう。私たち世界の創造主がどれほど意識を拡張できるかにかかっています。
この概念は実験的なものですから、私も具体例を出すのが難しいです。しいて出すとすれば……、例えば二種以上の種族が共生する多種族国家があるとして、種族ごとに「その種族らしい」服装や言動が決まっているとかでしょうか。エルフはだいたい白っぽい色の服装だとか、オーガは肉体労働が多いとか。
人間以外の異種族というのは、ファンタジー世界特有の設定であり、醍醐味でもあります。だからこそ、社会的種族差をどうやって構築するか、そしてどこまでうまく物語になじませることができるかで、その物語世界の質が大幅に変わってくることでしょう。
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