10.砂糖を入手するⅡ(はちみつについて)


 前項でお伝えしましたように、「砂糖」は主にサトウキビと甜菜から得られます。そして対象を少し広げて「糖分」とすると、新たにはちみつや果物などが挙げられます。今回は、その中でも特にはちみつに焦点を当てて説明を施します。



 「はちみつ」

 はちみつ。この黄金の液体は、人類と切っても切れない縁にあります。下手をするとサトウキビよりも歴史が古いかも知れません。例えばギリシャ神話のゼウスは山羊の乳とはちみつによって育てられましたし、モーセと彼率いるイスラエルの民は、目的地カナーンを「乳と蜜の流れる地」と呼んでいます。また、スペインのアラーニャにある洞窟壁画(およそ一万年前のもの)には、はちみつを採取する人間の姿が描かれているのです。

 そうそう、思い出してください。アレクサンダー大王が、インドの砂糖文化に接したとき、何て言ったんでしたっけ? 正解は「の助けを借りないでをもたらす葦がある」です。砂糖すらはちみつに例えられているのですから、古代人には身近な(されど高級な)ものだったのでしょう。


 野生の蜂の巣からはちみつを取るのはもちろんですが、養蜂もかなり古い時期から行われています。調べた限り、古代ギリシャではすでに行われていたと言います。

養蜂は4世紀のゲルマン人の大移動によって一時的に衰退してしまうのですが、野生の蜂の巣からの採蜜は続いており、また8~9世紀に在位した初代ローマ帝国皇帝カール大帝の時代には養蜂が推奨されました。

 その後、中世の時代になると、蝋燭の原料となる“蜜蝋”を得るために修道院が蜂を飼い始め、養蜂がますます盛んになります。もう一つの変化として、養蜂家、または蜜取りは特別な森番によって行われることとなり、密猟者には厳しい罰が待っていました……。

 甘味料として絶大な人気を誇り、そしてこれまた大切な照明の原料にもなるはちみつには、それ以外にも宗教儀式に使われたり、薬として使われたり、日本ではつなぎとして使われたりしていました。

 また調べていくと天敵もいるようです。スズメバチ、スムシ、ダニなどが代表例ですが、生物以外にも“蜂群崩壊症候群”という障害がありまして……、これはミツバチが大量に失踪する現象で、原因は不明だそうです。超有用である上に、採るのが大変なはちみつ。希少性の高さはお察しの通りで、貴族でも特別な日以外は食す機会は無く、一般市民にいたっては口に入れる機会は新婚期間くらい(つまり一生に一回)でした。


 ファンタジー世界において、はちみつは現実と同じように重要な甘味料として重宝されるでしょうが、錬金術用の材料や薬といった役割も担ってくれるに違いありません。特に、後者はゲームやTRPGによってはちみつとの関連付けが済んでおり、至る所ではちみつが治癒の能力を持つものとして姿を現します。ゲーム「モンスターハンター」シリーズはいい例です。

 はちみつはエルフが好みそうではありますが、ドワーフも意外と好みかもしれません。酒飲みというイメージを生かして、ミード(はちみつ酒)を作成する種族としても面白いですね!

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