8.塩を入手する


 「貴重品、塩」

 塩は人体に必要不可欠な存在です。最低必要量は一日0.5gという研究結果がありますが(国立栄養研究所応用食品部 より)、健康的な生活を送るには一日7.5gほどを摂取する必要があります(減塩ネット より)。また、重労働や炎天下での作業となると、一日に必要な塩は40gほどとなるでしょう。

 塩分が欠乏すれば“めまい”や“食欲減退”、“筋肉以上”など多種多様な不調が起こり、重度の症状ともなると“昏睡状態”に陥ってしまうこともあります。


 さて、塩が人体に必要であるということはこれで十分伝わったかと思いますが、では一体、どのようにして古代人は塩を手に入れることが出来たのでしょうか? いくつかの例を挙げていきましょう。


 ①岩塩

 岩塩は「内海の海水が蒸発した際に生成される塩の集合体」です。大規模な鉱床・岩塩床を作ることもあり、これが見つければ深刻な塩不足が起こることはまずないでしょう。ただ、中には採掘中に不純物が混ざってしまうこともあり、製塩が必要となる場合も少なからずあります。


 ②海水塩

 その名の通り、海水塩とは「海水から抽出した塩」のことです。岩塩とは違い、必ず製塩する必要がありますから、価格も岩塩の二倍ほどとなります。代表的な製塩法は海水を煮詰めていく「直煮法」ですが、例えば古代日本にはその他にも「藻塩焼法」や「揚浜法」、「入浜法」の計四種類があります。

 海水から塩を採取することはあまり効率的ではありませんが、岩塩のない日本などではしきりに行われてきたことです。過去に地殻変動の起きなかった陸地や島国などは、ファンタジー世界での出番も多いのではないでしょうか? そのためにも海水塩に関する知識は、ある程度インプットしておいた方が良さそうです。


 ③湖塩

 湖塩はいわば「岩塩になる前の海水塩」といった位置付けにある塩です。ボリビアのウユニ塩湖などは有名ですが、塩湖自体が珍しく、塩の恒常的な補給地としての役割は担ってくれそうにありません。

 ただ、こちらは「自然に天日濃縮された塩」と言い換えても間違いではないでしょうから、最も効率的ではあります。見つけることが出来た民族は幸運です。これが原因で中規模の戦争が起きるかもしれませんが……。


 ④他の動物から

 では、山や海に行かないと塩は手に入らないのでしょうか? そんなことをしなくても、獲物を狩れば塩を摂取できる、私はそう思います。塩化ナトリウムは全動物に必要なものですから(例外はあるかもしれませんが)、シカやイノシシ、クマなど森の生き物の体にも当然存在します。またどこで書いたか定かではありませんが、私は以前昆虫食についても触れたような気がします。昆虫は貴重なタンパク源であると共に、塩分の補給としても役立つでしょう。

 そうは言っても、単純に塩のみを欲する場合――調味や保存食の作成など――には、内陸部の住民は不利です。岩塩のありかを見つけなければ、手に入れる手段が無いのですから。

 ただ、料理を出来る程度の文明を持てば、交易が始まっていると捉えるのが一般的です。それ以前にも物々交換によって沿岸部の住民との交易で塩を手に入れることがあるでしょうから、内陸にある村落だからといって必ずしも塩不足に見舞われるなんてことはないのです。


 こうしてじっくり調べてみると、内陸部とて必ずしも塩が不足することはない、ということが分かります。すると1.2に書いた「超大陸」の説明が半分ウソということになりますが……、まあ、あながち間違ってはいませんよね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る