7.アウトサイダー

 

 「盗賊」

 私が愛してやまないのが、彼ら盗賊です。傭兵も好きですが、無秩序なようにみえて意外に秩序だった盗賊はやはり最高の題材ですね! この項では盗賊について、広く見ていきましょう。


 「賊」と付く集団は、山賊、海賊、馬賊などが挙げられますが、これらの語は住んでいる場所が名前の前につきます。ということは、「環境」の章でお話ししたそれぞれに住む住民たちのように、場所によって働きや行動が違うのです。海賊と山賊では、必要な知識が異なりますし、奪取の方法も然り。まずはこうして、描写していく盗賊の種類を決め、概要を明らかにしましょう。

 さあ、次に、盗賊がなぜ盗みを働いたり、暴虐の限りを尽くすのか、その理由を探っていきましょう。以下に考え付くままに理由を書き連ねていきますので、見ていってください。


・困窮しているから

・嗣子でないから

・一度罪を犯したから

・戦乱の世だから

・平和すぎて仕事がないから

・圧政がつらいから

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 このようなものがありますね。

 困窮は、言わずもがな。

 嗣子でないから、というものも、説明するほどではないかと思いますが、舞台となっている国、世界が、不合理にも長男しか家を継げないという風習が無い場合、こちらの理由は使えませんね。

 重い罪を犯すと、その先には死刑や終身刑など、それに応じた重い罰が課されることになるのですが、古代には「追放刑」なるものがありました。流刑とはまた違って、法に守られない「生ける死体」のような扱いをされてしまうのが特徴です。こうなった場合、大人ならまだしも、青年であればぐれてしまうかもしれません。そしてそのまま盗賊の仲間へ……。

 戦乱の世では盗みや暴力が日常茶飯事なので、盗賊活動の非道さが霞んでいきます。そこで、自分の身を守るためにもこうした力ある組織に入ること、そして彼らと共に活動することも必要となります。

 平和すぎて仕事がない、というのも少し特殊ですが……、これは「戦争」の中の傭兵でお伝えした通り、戦を生業として生きる者たちに該当します。もともと傭兵をしている人は金の為なら人を殺せる者たちですから、もしかすると盗賊とは紙一重なのかもしれません。

 苛政・圧政というのはファンタジー世界にはお決まりでございます(無責任)。いやしかし、歴史を見ていてもイギリスのシモン・ド・モンフォールの反乱だったり中国の紅巾の乱はそういった状況下で起きた乱ですからね。創作世界のなかに入れ込むのは容易でしょう。



 「平和喪失者」

 先の項でも申したように、古代ゲルマン人の社会には「追放アハト刑」と呼ばれるものがありました。これは裁判によらない紛争解決方のひとつで、宗教上の罪などに適用されました。追放されたものは「人間狼」と言われ、森で彼を見たものは彼を殺しても良いといいます。まさに、平和を失った、生ける死体です。ちなみに、身代金を払うことで共同体の中に戻ることができたそうですよ。一応希望の糸は垂らしているのですね。


 そのほか、人権が保障されていない奴隷や、日本で言う穢多、非人などの被差別者も平和喪失者と言えます。が、アテネでは家内奴隷が家事を担う一員でしたし、スパルタではすべての農業に携わっていました。また、近世の大西洋三角貿易でも、奴隷は重要な“商品”でした。もし奴隷を人と見做さずに殺してもいいというのなら、それ相応の人数が必要です。

 また、穢多えた非人ひにんは「最下層の仕事」を担っていました。例に出せば、牛などの動物の革をはいだり、囚人たちの世話をしたり……。確かに「最下層の仕事」と呼べるものばかりです。しかし! 彼らも日本社会に必要不可欠な存在でした。彼らが突然いなくなったら、血の穢れや死の穢れを恐れずにその仕事を進んで行う猛者は果たしているのでしょうか? 大乗仏教の教義のもとに生きる人々なら、まず無理なことでしょう。

 蔑視されたり、人として扱われなかったりする人々もいましたが、流石に意味なく殺されるようなことは少ないのです。彼らが存在することにも、何かしらの意義があるのですから。

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