6.正義論
前項では、二階にわたって悪役についての解説を行いましたので、今回は正義についての解説です。
しかし、「正義」は、悪と同じくらい(もしくは以上に)解説の難しい概念であります。ともすれば自己満足になってしまいがちな正義論者をみて、皆さんもこの難解さをお分かりになっているでしょう。
「主人公=正義?」
本題に入ります。悪役が登場する作品は多くの場合、主人公が「正義」です。でも、どうして? そうでなくては帳尻が合わないと言わればその通りなのですが、一旦そういった意見から身をひいてもらって、まっさらな状態で考えてみましょう。
主人公=正義ということは、「正義」を中心として物語が回っていくような、そういった作品が主流である、ということでしょう。もともと原点にはAとBという、二人の背反する思想を持った人物しかおらず、主人公、そして悪役という区分は無いのです。そしてどちらかを主人公とした時、もう一方が自然と悪役になるという仕組みです。
であるならば、正義と悪役の違いは、突き詰めていけば“配役の違い”でしかないということになります。当然ながら、どちらを「正義」とするかは世間の倫理観や正しい人道などに左右されますが、この議題は、ここで語るには複雑すぎます。
ここまで読み進めればお分かりかと思いますが、この項で私が言いたいことは「主人公が正義であること」ではなく、「主人公と悪役の根源的な立場は同じであるということ」です。ですから、物語においては話の中心となった方=主人公が正義と見做されることが多いという理屈です。
うーん、ここ最近徐に気付き始めたのですが、多分私って文章まとめられない人ですね。書きたいことが多い余り、固まりきっていない情報を紙面に書いてしまうせいです。
まあ、これ以上言うと、ただの自己分析になるので……、ここでは正義についてお伝えするのでしたね。次に進みましょう。
「勝者=正義」
もう一つ、「正義」を決定づけるのに役立つ論があります。それが題名にもある「勝者=正義」論です。よく耳にしますね、「勝者の歴史」と。残念ながら、この格言は的を射ていると思います。死人に口なしですから。
「アメリカは罪の文化、日本は恥の文化」というのは、アメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトの言葉です。はっきり言えば、アメリカ=正義の国で、日本=世間の国ということでしょう。そういわれると、アメリカはいつも戦争を行うにあたって自分を正当化していくことから始めていることに気が付きます。実際ここまではほかの国と相違ないのですが、面白いのはここからです。というのも、同国は自国こそが正義であると位置づけられないと、とたんに苦しい強いられることになるためです。
あれほど広大な土地と潤沢な資金を持ち、さらには当時最新の兵器をも持ち合わせていたアメリカが、東南アジアの一国ベトナムに敗北した。そのニュースは世界中に衝撃を与えました。ここで、アメリカは自らを正義であるとうまく主張出来ず、その余波は金ドル本位制崩壊にまで波及していきます。それゆえに、ベトナムを単に“正義”という二文字で片付けることもできませんが、勝者が正義の称号を手に入れ、さらに正義を貫き通せたから勝利をつかみ取れたという理論は、ある程度正確であると考えます。
とは言え、結局正義と悪は根源を同じくし、紙一重の状態であるため、これらの概念をきっぱりと定義づけるのは、今の私のでは力量不足です。そこで、最後に一言お伝えして、この項を終わります。
「正義の反意語は、また別の正義。悪は存在しない」
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