2.固有名詞 分類法Ⅱ
ここでは上記以外の名詞区別法をお教え致します。一つ目は前項に書かれていますが、「母音と子音の割合の調整」です。そして二つ目は、「出現する音素の調整」です。
一つ目について。
いきなりですが、日本語は母音の数が比較的多い言語です。下をご覧ください。
・My favorite genre of novel is fantasy, especially high-fantasy.→母音:18/子音:35
・私の大好きな小説のジャンルはファンタジーで、特にハイファンタジーが好きです。→母音:35/子音:34
英語と日本語を実験材料として対照したところ、英語は母音と子音が1:2であるのに対し、日本語の場合、割合は1:1と、大きく異なります。これは言語の違いを表現するのに役立つ結果です。これを使って試しに単語を作ってみましょう。
A:母音と子音の割合が1:2…hustate,grasbamin,andbures,ludcan
B:母音と子音の割合が1:1…harimaru,katarue,kirione,bukundo
どれも特に意味のない単語ですが、AとBでは語感が異なると思いませんか? 母音と子音の割合を改変するだけで、「言語の区別化」という一見無謀な作業にも希望が見えました。
そして二つ目は「音素の調整」でしたね。音素とは、とある言語の”音”を分析して得られる最小の音の単位です。日本語では「あ、ま、と、い、ぶ」などが、英語では「a,m,t,i,b」などがそれぞれの音素です。日本語は音素の数が多い分、発音が簡単です。一方の英語は音素の数が26と少ないですが、それが複合して新たな音を作るために、発音が難しくなっています。ただ、発音を紙面に出すことは難しいため、音素で言語を分類する方法は実用的ではありません。
実用的な方法はその前の段階にあります。つまり、音素の複合やら初期結合は気にせず、そもそも使える音素を「増やす」か「減らす」かの作業を行えばいいのです。アラビア語が例としては一番わかりやすいでしょう。この言語は母音が三つしかありません。「ア」と「イ(エ)」と「ウ(オ)」の三つです(括弧をつけたのは、イとエ、そしてウとオの区別がないということ意味です)。さらに日本で言う半濁音「パ行」の音素も無いというのです。但し、その分子音の数は28個と多いのが特徴です。その中には有声軟口蓋摩擦音など、私たちには発音しづらいものもあります。と、このままだとアラビア語の解説になってしまうので、ひとまずややこしいことはここで終わりにして……。
お分かりいただけたでしょうか? 思い返せば確かにアラビア語は独特です。
「ハールーン=アッラシード・アブー=バクル・イブン=ハルドゥーン・アブド=アッラフマーンなどなど……」
こうして人名を書き連ねていくだけでもその特徴が何となくわかるかと思います。しかし先述したアラビア語の“特徴”は、見ているだけでは気づくことはできません。今ここで、この文章をお読みになっている方は、他の作者より一つ上の段階に上がりました。少なくとも、固有名詞作成に関しては。ですが、これを知っているか知っていないかでは世界の「リアリティ」が大分異なってくるはずですし、大袈裟ではありません。
この項のポイントをまとめると
①:創作言語の語彙を作る
②:母音と子音の割合を調整する
③:使う音素を選ぶ
の三つです。もちろん質の良いストーリーや、魅力的な登場人物を揃えることの方が大切ではありますが、この三つのポイント、そしてこれからお読みいただくであろう第八章「創作に注意すべきこと」の続きをぜひ一つでも頭にいれておいてください。そうすれば、読み手は「この作品、何かが違う……。やるな」と感じてくれるかもしれません。少なくとも、やらないよりは、その可能性は必ず高まります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます