4.言語
言語に重点を置いた姉妹作ができましたので、もっと詳しく知りたい方はご覧ください。https://kakuyomu.jp/works/1177354054899888956 (ファンタジー言語構築ガイド)
「旅と言語の壁」
戦争で敗色濃厚なA国の使者として各国に出向き、冒険をしながら心身ともに成長していく主人公の姿。B国がだめなら次はC国。やはりだめ。ならD国……。なんとも応援したくなるような健気さです。しかしですね、ここで少し踏みとどまってください。この主人公、いやにグローバルですね。すべての国が別々の言語であるならば、4か国の言葉を話せることになります。もちろん翻訳家がいればまた別の話になりますが。
ネゴシエーターを主人公とするならまだしも、冒険譚の場合はどうでしょうか? 言語の問題は意外と忘れられがちです。その主人公がまるで言語の天才であるかのように、世界中を旅していることがざらにあります。
その冒険者が訪れる国がすべて同じ言語を公用語とすれば問題は解決してしまいますが、例えば魔界はどうでしょう? 海を隔てた大陸に住み、体の構造異なるといった設定が多い彼らが、人間と同じ言葉を使っていると考えるのはいささか無理がある気がします。エルフ、ドワーフ、竜人が、同じ言葉を話すでしょうか?
一番良い対処法は、その世界でじっくりと時が経って翻訳の手段――ある程度の交流による二か国語を話せる人物の出現、また自国の言葉と相手国の言葉が同時に載った辞典などが世に出回る「その時」――を待つことでしょう。こればかりは現実の歴史を完全にお手本にしてもオリジナリティが欠けることはありません。
もう一つの対処法として、「リングワ・フランカ(共通語)」を設定するというものもあります。人間界と魔界が長い間交流しておらず、上記の「その時」よりも後の時代に魔界と交流を図るのであれば、共通語の制定もあり得ます。
「指輪物語」で今もなお人気を博しているJ.R.R.トールキンは、言語学者だったため、彼の作品群から解決策を見いだすのも一つの手だと思います。
「共通語」
先の文章で共通語という言葉が出てきたので、ここはひとつ、その概念について考えてみましょう。
インドのお札には17の言語が書かれています。この情報はもう、半ば常識のようになっていますが、お札に乗るだけでそんなに多くの言語があるのなら、インドの人たちはどう会話しているの!? こういった疑問はいまだにあると思われます。実は皮肉なことに、インドを統治していたイギリスが押し付けた「英語」によって、インドのコミュニケーションは多少たりとも円滑化したのでした。支配されることは、デメリットだけしか生まないということでもなさそうですね。
では本題に入りましょう。共通語を皆さんの世界に入れ込むには、少々工夫をしなければなりません。英語は今や世界共通語と言われますが、反面、英語の世界浸透化やグローバリズムは米国の新たな帝国主義と批判されることもあります。
また、共通語となる言語が自国の言語であれば様々な利益がありますから、当然世界で最も力を持つ国の公用語がそれとなるでしょう。人工的な言語(エスペラント語とかありましたよね……)を作るのも一つの手ではありますが、母語とする人が誰もいない言語を次世代に教え込むのには無理がある気もします。
ですので、繰り返しになりますが、共通語は魔界と人間界の交流の必要性が生じた際に制定されるのが最も矛盾を生まず、安全だと思われます。
まとめ:言語はファンタジー世界の中でも一二を争う重要な設定だが、見落とされがちである。またご都合主義の展開により、存在自体が霞んでしまうこともしばしば。他人と差をつけるためにも考慮すべき。
共通語を作成する際にも、その存在意義と、何を共通語とするかを決めておくこと。人工言語は次世代が話す言葉としては少々心許ない。
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