3.文化間の衝突
「文化を支配する」
強大な力を持った国は、ある程度自国が発展すると、次に市場や農場を求めて他国に遠征するきらいがあります。それは至極もっともなことでありますが、果たして多文化への理解が生半可な状態でその国を完全に支配してしまうことなどできるのでしょうか?
ネブカドネザル王で有名なアッシリア帝国は、史上初の世界帝国ですが、重税や多文化の徹底的な破壊などにより僅か60年足らずで滅亡しました。その後オリエントを再統一したアケメネス朝ペルシャは、アッシリアとは対照的に文化を重んじたために長寿となります。
さてここで成功した例をもう一つ。今度はイギリス(大英帝国)によるインド支配の話なのですが、インドにはカースト制度があります。イギリスはですね、このインド特有の文化をうまく使って、「インド人」が結成して大規模な反乱がおきるのを防いだのです。報道ではあまり触れられることはありませんが、実はその時期のインドではカースト制度が今よりも緩かったという説もあります。しかし現在は異なるカースト間の結婚で殺傷事件が起こる始末です。これがどういうことか、もうお判りいただけたでしょうか? インドの文化を、イギリスという列強のわがままが再構築、再生産したことによる弊害が生じたのです。
地域の文化を用いた支配は、強力な楔となることもありますが、被支配国の将来に多大なる影響を与えかねません。
「文化への介入」
他の文化を壊すことはないが、一部の風習が自国のそれとは異なるために改変を要求する、これが文化への介入です。そして私が最も図々しく、有難迷惑なものであると信じるところでもあります。
例えばですね、Aという国では現在でも太陽神への生贄として年に一度、5人の人間が殺されるという「文化」があるとします。Bという国では配偶者が死んだ場合、残されたもう片方も自殺するという「文化」があるとします。それらが現在の、現実の世界にあったとしたら、国連や世界人権なんちゃらや人命大切運動なんちゃらが黙ってはいられませんよね。倫理のかけらもないとされて。自論を展開しますが、これは非常に好ましくない状態としか言いようがありません。この調子で世界から血生臭い文化を無くせば、地球はキリストのアガペーと、イスラームの喜捨(ザカート)の慈愛一色に染まることでしょう。近年サウジアラビアが、女性ドライバーの認可を王令でさだめましたが、こうして自発的にどこかで折り合いを付けるのが最も好ましい。倫理観の押し売りは、強国しか得をしませんからね。
少し熱が入ってしまいました……、クーリングオフします。すみません。気を取り直して、これをどうファンタジー世界に役立たせるかといえば、色々ありますが――例えば宗教上の理由などで迫害された主人公が復讐を行うと共に、世界に文化の共生を訴えかける――少々重いシナリオになりますが、それだけ読み手の感情を揺さぶってくれるでしょう。
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