八章:社会

1.国の種類

 ファンタジー世界の構築も、いよいよ終盤です。ここでは人間を中心とした知能を持った種族が、どのような社会を築くのかという点に視野を狭めて考察していきます。しっかりとした社会が作られれば、物語を創作する手掛かりになるどころか、自ずと物語が湧いて出てくることでしょう。



 「王国」

 この章「社会」を始めるにあたって、まずは国家の種類から踏み込んでいきます。さて題名にもある通り、ここでは王国について紹介をしていきます。

 と言っても王国は人口に膾炙している言葉ですから、簡潔に。


 王国とは「王」が「元首(国を代表する資格をもつもの)」として存在する国の形態のことです。現在の日本における「天皇」の関係が、王国の「王」に似ていますね。あくまでも「代表」ですから、政治は官僚に担当させます。

ただし、この定義が崩れることもしばしばあります。ルイ14世は絶対王政君主として有名ですが、その時フランスは「フランス王国」でした。国号を変えずとも、王が実質独裁政治を行う可能性は十分あります。その際重要になるのは官僚制と整備された国軍です。

 王の地位が帝王や皇帝になれば、当然「帝国」となります。



 「大侯国、公国、伯国……」

 古地図を見ていると、リトアニア「大侯国」やモスクワ「公国」、トリポリ伯国など、王国でも、帝国でもない謎の国があります。これらの説明をしていきます。


 王国や帝国など、元首がいる場合の国の形態を「君主国」といいます。上記のごたごたした国も、すべて君主国の括りに入ります。すると……、もうわかりますよね? つまり、その国の元首が王であれば王国となるので、侯爵であれば侯国になりますし、伯爵であれば伯国になるのです。となると今度は何をもって「伯爵」や「侯爵」といわれるのかが疑問ですが、これは帝王や教皇など、国を超えた権力をもつ人物に授かるそうです。但しこれは現実のヨーロッパの話ですから、皆さんの世界に必ずしもこの規則を導入しなければならないということではありません。



 「王朝」

 ファーティマ朝、清王朝、パガン朝、チョーラ朝……。”○○朝”は、世界の歴史を語るには外せない存在です。しかし、義務教育の試験問題に王朝の定義を訊く問題など出ることはまずありませんから、結局歴史に興味のある方しか王朝の定義を知らないで学校生活を終える……、そんなこともあるとおもわれます。

 王朝(この場合、王朝国家の略とみなしています)は、同じ家柄に属するものが王位を継承していく国の形態のことです。多くは近代以前の世界で成立しました。

 王国と異なる点は、「君主新政」であることです。ですから、どちらかというと絶対王政に近い印象があります。



 「共和国」

 そのほかの代表的な国の形態には、共和国があります。王や君主はおらず(いても象徴くらいでしょう)、国民がその意向を選挙などで政治に反映させるというものです。現実世界では歴史的に見て、国民主権が叫ばれてからというものの共和制が「善」で王制や独裁制が「悪」と民衆に思われていた観も否めません。


 しかし、共和国(共和制)にも欠点がないわけではありません。古代ギリシャのアテネでは、隙を見た僭主が政体を僭主政に転換させ、戦争を経て衆愚政治にまで転落していきました。その時期はまだ制度が整っていなかった、と片付けられてしまいそうですが、法に強いといわれる古代ローマも、共和制から結局は帝政に変わっています。

 というわけで、共和国、共和制を導入する際には、その形態が永久に続くことは先ずないと心得ていたほうがいいでしょう。逆に言うと、共和国が崩壊してなんちゃら……、といった具合に歴史を創れば、その世界にリアリティが増します。


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