7.対象の種類



 「無機物」

 対象が無機物の魔法は多いですし、何より考えやすいので、初めに確認しておきましょう。対象が生物ではない場合、それ自体が動くということはありませんから、先ず魔法をかけるのが楽です。さらに、生きていないということは、生き物に特有の「生命力」の生み出す「抵抗」が無いため、こちらも無機物に魔法が掛けやすい理由になります。

 ここまであたかも無機物は初心者向けの対象だ、と言わんばかりの解説が続きましたが、もちろん上級魔法にも欠かせません。例えばゴーレムは無機物に魔法を込めて作られますし、床に魔法陣を描いて魔物を召喚、といった具合の魔法も無機物を用いた上級魔法でしょう。


 「生き物」

 命あるものに魔法をかける。禁忌がつまったフレーズのような気もしますが、無機物よりかは生きたものが対象でないと張り合いがないですよね。

 ただし、先ほどの記述にある通り、生き物が抵抗する場合もありますし、食物網の上位の生き物であれば、その抵抗は苛烈さを極めるでしょう。

 また、はたして最強生物のドラゴンが魔法にかかるということはありうるのでしょうか? もしあなたの世界のドラゴンが生命の頂点に君臨しているならば、これは何らかの設定を追加してでも避けたいものです。



 「人間」

 人間に魔法をかけるというと、思い当たるのは「精神操作」「治癒」「蘇生」あたりでしょうか。

 精神操作はあまり悩むようなものではありません。というのも、その仕組み・手順をコンピューターハッキングと同じとみなせばいいからです。ファイアウォールを個人の”精神力”として、壁がもろければ――つまり被害者の精神力が低ければその心に容易く侵入できます。


 治癒と蘇生は曲者です。

 まずは治癒ですが――皆さん、軽傷を一瞬にして直す方法をどう思いますか? 現在の科学技術をもってしてでも再現不可能な現象。“ホイミ”や“ケアル”と唱えれば済む問題ではありません。であるから、仕組みも難解です。例えば細胞の活性化を促し、損傷の治癒をするとか、怪我の部分の時間を少し戻すか早めるかという仕組みを思いつきますが、「細胞の活性化」? 「時間操作」? こういった調子で、考慮しなければならない要素がとても高度になってしまうのです。 そもそも治癒魔法というのがどちらかといえばゲームを縄張りとしている観があるので、小説に取り込むのが難しいのかもしれません。

 蘇生ともなると構築難易度はもはや未知数!? ところが、です。蘇生に関するファンタジー小説は治癒に比べれば多くありますし、なにより人類の長年のテーマとなってしまっていますから、ファンタジー作品でなくとも蘇生を題材とした小説はあります。

 全人類の願望であるとともに、治癒よりも不思議といった印象が強い為にこうした厚遇があるのかとも思われます。参考文献があるのはありがたいですが、必ずしもその考えが、あなたのファンタジー世界にフィットするかはわかりませんのでご注意を。下手に入れこむとここまで作ってきた世界に矛盾が生じます。

 「賢者の石」という有名な宝物がありますが、どうしても良い設定が思い浮かばない場合、こういった人智を超えたアイテムを使うことでしかこれらの魔法を使うことが出来ないといった設定もありかと。



 「空間」

 目の前に光を作り出したり、土の塊を生成したりといった魔法は、空間を対象としたものだと定義できるかもしれません。ただし、そう定義づけした場合、無対象魔法が無くなってしまいかねません。だから何だと問われたら、「こんな問題があるんだぞ!」とは言えないのですが……。魔法の多様性が欲しい、くらいですかね。


 空間を対象とする場合、本当に空間そのものが対象となるのか、それとも空気の一部が対象となるのかなど、曖昧になりがちな「空間」をきっちり定めておくと土台がしっかりします。空間の中の精霊が対象としてもいいかもしれません。

 もし空間を爆発させる”イオ”のような魔法があったとしたら、精霊は自らの身体を爆発させるのでしょうか? こういった疑問も浮上してきますので、一考するべきです。



 「周囲」

 では、気候をあやつる魔法も「空間」を対象としているのでしょうか? しかし、それにしてはちと広範囲すぎやしませんか? ただ範囲を広くしただけ。言葉で表す方が簡単です。広い空間、それも周辺一帯に作用を及ぼすとなれば高度な技術・卓越した魔力が必要そうです。

 「周囲」とはあらゆる方向がその対象で、対象の中にいる生物ももちろん範囲に含まれているはずです。ここで下手に魔法が干渉してしまうと厄介なことになります。ですから先ほどの「空間」の項で、その定義を定めておく必要があるといったのです。



まとめ:魔法の対象の種類は「無機物」と「命あるもの」そして「触れえないもの」の三つに大別できる。それぞれ性質が異なるため、対応魔法はもちろんのこと、”対象”自体の構築も必要不可欠だ。

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