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「え、蘭子さんが」
おっと、つい言葉に出てしまった。だって大金持ちで社長でエレガントでなんかいっつもフルコースとか食べてそうな蘭子さんが、大衆酒場なんて! いや、俺の店も結構庶民派ではあるけど、大衆酒場て! かなり浮いたんじゃ?
「そりゃ、まぁ、うん。さすがに連れて行かれた時は驚いたけどね。だってクリスマスイブの、デートとは言わないまでも女性を連れて行くのが大衆酒場って」
まぁ一般的な男性であれば驚かないけど、相手が蘭子さんだからなぁ。
「浩太郎がお詫びに奢るって連れて行ってくれたから、さすがに文句は言わなかったけどね。でも、あの子、すごく面白かったのよ」
そうして、くくく、と抑えきれない笑みが零れる。
「席に座ったら、バラの花束を渡して来たのよ。ドタキャンしたお詫びって。手作り感のある木製のテーブルセットにバラの花束よ? あんまりアンバランスでつい笑っちゃった」
「ふふ、そんなことが」
「そうなの。浩太郎の考えていることはやっぱりまだ私には分からないみたい」
そう言いつつも表情は幸せに溢れている。あぁ、良かった。
「それにお店も浩太郎の行きつけだっていうし、仕方ないから許してあげたの」
「それはそれは」
「浩太郎が私のことを考えてくれたのは本当だしね。これも惚れた弱みってやつね」
うっすら笑みを浮かべながら、蘭子さんはグラスを煽る。長い髪をハーフに止めた髪飾りがキラリと光る。
「髪飾り、お綺麗ですね」
ゴールドのシンプルなデザインのものだ。シンプルだからこそ、その佇まいは美しい。
「ありがと、私も気に入っているの」
その髪飾りが浩太郎さんの手作りのプレゼントだと分かったのは、三杯目に差し掛かった蘭子さんが楽しくなってきた頃だった。
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