第4話(番外編)キララとツクシ
番組「男女8人シェアハウス物語」がスタートした。月野キララを最高に美しく映し、イケメン俳優高田君との今後の展開を期待させる所で終わらせる。主題歌は、ティラースミストの「ウォウウォウスイート」とかいう歌だった。
ウォウウォウイェアハンアンーウォウウォウイェアハハハンアンーとしか、正直音楽に疎い私には聞こえなかった。英語のオシャレな歌の筈なのに、夜の営みの擬音にしか聞こえないのは、きっと私の頭が少し変態だからなのかもしれない。
番組製作者や、スタッフの思いを無視するかのように、美人で「なりたい顔ナンバーワン」だけど既に小さい頃から子役しすぎて視聴者は既に全員ご存知の月野キララや、性格いいけどイケメン大根役者の高田君よりも、人気者?になりすぎてしまった人物が出来てしまったのだ。
それが、谷口ツクシ。私だ。シェアハウス物語で、常にキモキャラだった私だった。
最初は、2ちゃんねるでボロカスに「ブスキモキャラ」と言われて叩かれた事からはじまった。とりあえず、全身アトピーで動きがクネクネして気持ち悪いし、本当にテレビに出るだけでチャンネル回したくなるとか。食事中にテレビに出るなとか散々叩かれた。
えっ。心が折れるって?私の狙いはそこだった。私の醜い姿で、どうやって売れたらいいかといったら。強烈なインパクトを視聴者に与えて嫌われる事からだったのだ。
この世界で売れる為には、どうでもいい人になってはいけない。この醜い体をフル活用する事で、芸能界でのチャンスを手にする。
やがて、振られ続けてもめげずに高田君にアタックする谷口ツクシの恋愛姿勢や、ショックを受けると白目向いて失禁する「ツクシポーズ」が巷で流行した。幼稚園や小学校では、ツクシポーズ禁止令が出るなどのブレイクぶりだった。
本来なら、月野キララと高田君を抱き合わせでバラエティに出す方向で作られた番組だったが、私の余りにものブレイクぶりで、月野キララとは比べられないように一緒のバラエティ出演はNGになった。
やがて、私と高田君が二人揃ってバラエティに出演することが増えた。
私が番組でるなり、「ウギャー!キモーい!」と、観覧者が声をあげる。でも、そんな事。気にもならなくなった。
いつも、番組の収録後は高田君がそっと手を握ってくれる。
口では何も言わないけど、
「つくちゃんは、キモくないよ」と言ってくれている気がした。
私達は、決して付き合ってる訳ではない。ただ、高田君と私は毎日他愛のないメールをするようになった。
高田君は、これから厳しすぎると話題の逢川監督が監修している舞台にチャレンジするそうだ。
「はやく、大根役者と言われないで。
一人前の役者になって、味のある役者になりたいんだ。今旬のイケメン役者のままだと、いずれ仕事なくなってしまうと思うからさ。少しでも若いうちから、渋くていい演技が出来るようになる為に実力をつけたいんだ。
この舞台が、もし終わったら、つくちゃんご飯食べに行こうよ!つくちゃんに、改めて話したいこといっぱいあるんだ。」
高田君は、もっともっと飛躍したいと思ってる。私は、そんな高田君をかげながら応援したい。付き合う付き合わない関係なく、彼を純粋に応援したいの。
キララは、相変わらずCMやドラマで大人気だ。だけど、男女8人シェアハウス物語でのインタビューが、実はデタラメだったり、キララの父親と裏のドンに黒い繋がりがある事が週刊誌などで取り上げられ、キララの人気には少し翳りが見えていた。
そんな中、彼女の父親が突然逮捕されたと報道された。
どうも、キララの父親は色々な女性からお金を借りては逃げていたり、多額のお金を横領する事件を起こしていたらしく、キララも小さい頃から稼いできたお金を殆ど父親に渡していたそうだ・・・。
テレビに写ったキララの父親は、彫りの深くて、キリッとした眉毛と目の男性だった。今時の顔というよりは、昔ながらの端正なハンサム顔といった感じだ。キララに、とても良く似た端正な顔立ちに、ダンディさも兼ね備えていた。
よく。パパがキャッチボールしてくれたんだ。小さい頃は肩車して、いっぱい遊んでくれたんだ。パパは、いつも優しかったんだ。って、キララはいつも嬉しそうに語っていた。
でも、いつもキララの語る父親の話は「小さい頃の、パパ像」で、今現在の話はあまり出てこなかった。
キララは、お父さんの悪口なんて、一言も言ったことなかった。キララは、ああやって強がって生きていたけど、それなりに色々抱えて小さい頃からずっと頑張っていたんだろうな・・・。
ふと。勘当同然で、家を出た事を思い出した。
何気なく、私は母親に電話した。「元気?」と聞けば「あー、元気よ」とかえってきた。「元気でやってくれればそれでいいから」そう言われて、電話を切られた。
仕事に干され気味だったママも、最近では少しずつまた仕事が増えるようになってきたみたい。ママと連絡を取る事はないけど、時折風の便りでママの噂話を聞くようになったからだ。
わたしも。キララも。高田君も。これから、色んな道が用意されているんだ。その道が、成功なのか失敗なのか。もしかしたら、成功も失敗もこの世には全て存在していないのかもしれない。
私は、これからも自分の納得いけるように道を選択していきたい。例えそれが、失敗だとしても。
後悔だけはしないようにねって。
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