第3話(番外編)キララとツクシ
「つくちゃん。今回の収録も凄く良かったよ。迫真のキモい演技が出来てた・・。
あれって、つくちゃんのアドリブなの?」
高田君が、目を丸くして私に言う。「迫真のキモい演技」と言われた事に対しては、正直ショックだった。確かに、高田君にチューを無理やりせがんで、拒否られたら大泣きして暴れて「キモいんだよ!ブス!あっちいけよ!」という高田君の発言へのショックで白目むいて失禁するとか。やりすぎたかな。
それでも、「女よりも、演技」に力を入れた私。レギュラーよりも、一回の伝説。まさに、私の心は女江頭2:50分だった。
周囲のメンツは、「やぁだぁ」とクスクス笑いながら閲覧してた。それでも、ワタシみたいなブスがテレビで有名になるためには、とにかく捨て身のインパクトが必要だったのだ。
「さっきは、キモい!あっちいけ!とか行ってごめんね。実は事務所に言えって言わされてて・・。
でも、つくちゃんの番組に対するプロ意識っていうのかな?
俺さ。俳優の卵みたいなもんだから、まだ演技の事とか業界の事とかよくわからなくって。
そんな時、ひたむきに番組に向かって仕事に取り組んでるつくちゃんを見て密かに尊敬してるんだ!
いつも、誰よりも早く楽屋・・・。いや、楽屋がつくちゃんには無いから廊下なんだけどさ。
ずっと、廊下で台本と睨めっこして、頭の中で、シミュレーション?イメトレっていうのかな?
いつも、ブツブツ目をつぶって何かを考え込んでる姿を見て他の出演者とは違う何かがある人だって思ったんだ。
皆は、俺に対して優しい言葉をかけてくれたり、手作りのお菓子くれたりするけど。
でも、なんかもうそういうのって、小さい頃からずっと経験してて。俺が、その女の子の告白を断った途端に、みんな手の平返したように冷たくなったり。俺の悪口いったりする。
俺が好きな子できるものなら、次の日には。その子虐められたりするからさ。なんかもうそういうの嫌になってて。
そんな時、たまたまプラッと歩いてたら、スカウトされた。学校行きたくないから、芸能界入ったのに。
あれよという間に次世代ブレイク必須イケメン俳優みたいな扱いされててさ。
俺。演技の事なんてまだまだ何も知らないし。ネットでは、散々大根って言われてるのに。
もう、しばらくドラマとか出たくないですって言ったら、この仕事が来たんだ・・。
同じく売り出し中の月野キララちゃんと、
この番組で熱愛発覚→交際な話にさせて、更に抱き合わせで二人とも売り出そうって魂胆。
俺は、普通に実力つけてコツコツ努力して認められたいのにさ。事務所は、どうやら俺を旬のイケメン俳優として売り出したいみたいで・・・。
全てが嫌になってた頃、つくちゃんの仕事に対する取り組み方を見て。俺、感動して涙出て来たんだ。
この子は、崖っぷちから這い上がる為に自力で努力して頑張ってるんだなって。」
高田君は、何故か私の事をツクシではなく「つくちゃん」と呼ぶ。
そして、いつも私にとことん優しくて誰も見てないような所を褒めてくれる。高田君は、ワタシみたいなブスにも優しい。人の事も馬鹿にしたりしない。
なんて、清らかな心の人なんだろう・・。
高田君と二人きりになった時は、いつもドキドキした。私なんて、どうせ相手にされないとわかっている。それでも、こうして会って顔を見れるだけでも幸せだった。
しかし、最近私と高田君が仲良くなっているのを、ブスーッとした顔で眺める女がいる。月野キララだ。
「たぁかぁだぁくぅーーーん。ちょっと来てくださぁいよぉーー。なんか、私足くじいちゃったみたいなんですぅー。」
と、いつも仮病使っては私と高田君の会話を遮断する。
あんた、小さい頃。芸能活動の傍ら空手有段者になってたんじゃなかったっけ?ハリウッドデビュー目指してアクションするとか言ってなかった?ソフトボール部で、ピッチャーやってたんじゃなかったっけ?
そんな女が、足挫いた位でなにピーピーいってんのよ!そして、私の淋しそうな顔を見てはニャッと笑う。ほんと、何処までも最低な女だと思った。
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