「採点の時間」(5)


 ――入店音。


「あれ? 人がいっぱい居る」


 魔……ではなく、間の抜けた声。

 白雪先輩。


「あら? どうしたの? 今日はシフト入ってないわよね?」


「うん。今から面白いもの見るから、酒とつまみでも買おうかなーって」


 おっさんじゃねーか。というか、その面白いものって完全に卒業試験では?


「いいじゃない。映画かしら? ワタシ最後に見たのって、何か隕石が降ってくるやつだったわ」


 隕石のやつ……ナナかな。


「まあ、そんな感じ。知ってる人が出るからさー。見なくちゃって思って」


「……白雪先輩?」


「だいじょーぶ。見つからないって」


 ならいいけど。

 ナナも首を傾げて(パンを落として)いるし、自分の事とは思っていないっぽい。


 ……でもなんか、長居しない方が良い気がする。さっさと帰ろう。


 俺は適当におにぎりをとって、レジに向かう。既にパンが大量に積まれていて、店長はひたすらにバーコードを読み取っている。白雪先輩は酒を選びに行ってしまった。


「すっごい食べるのねー。見て見て。パンだけで五千円!」


 ううん……。俺が払うのか? 払うんだろうな。まあちょっと、覚悟しておこう。


 五千円超えてからもカウントは止まらず、最後に俺のおにぎりをもって六千円を超えた。今月どうやって生きたらいいんだ……。


「早く帰りましょう、彰彦さん。お腹減って死にそうです」


 こいつは……。


「ナナちゃんまたねー。後で、」


「先輩?」


「……あとでー、遊ぼうね?」


「? はい」


 誤魔化すの下手かよ。ナナも察しが悪いな。

 まあでも、緊張はほぐれたかな……。

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