「採点の時間」(4)

「あらあらあら! 彼シャツで登場ってワケ!? 見せつけてくれるじゃない! あれ? ジャージでも彼シャツって言うのかしら? 彼ジャー? はっ! もしかして彼シャツって死語!?」


 ナナを見るなりマシンガンのように喋り出す店長。どうやらこの人は黙っていたら死ぬらしい。


「……クラスの人が言ってるの聞いたことありますし、多分大丈夫じゃないですか」


 馬鹿じゃないかとは思ったけど。


「そう。良かったわ。でも流行とかホントに分からないのよねぇ。ワタシも雑誌とか読んだ方が良いのかしら」


「やめてください。そのままの店長でいてください」


 かっと目を見開く店長。

 怖すぎる。スペードぐらいなら殺せそうだ……。


「まっ! そのままのワタシが好きってこと!? やだ安芸津ちゃんったら! やだー!」


 嫌なのかよ。それが乙女心ってやつなのか。

 ナナはというと、店長を無視してパンを物色している。扱い方が分かったらしい。


「まあ、何ですか。ナナが腹減ったみたいなんで、決戦前に腹ごしらえというか」


「決戦?」


 あ、やっべ。


「……試験ですよ、定期試験。これから追い込みを掛けるんです」


「ああ、そういうことね。定期試験ねぇ。何だか懐かしい響き……」


 この数日で誤魔化すのが上手くなった気がする……。というか定期試験が近いのは本当なんだよな。本当にもう、どうしようか。


「彰彦さんは食べないんですかー?」


 後ろからナナの声がして、振り向くとそこにはパンの妖精が居た。いや、違う。ナナだ。どうやって積んだのか知らんが、顔が見えないほどパンを抱き抱えている。


「あらあらあら。それって一食分? 見た目に反して良く食べるのねぇ」


 もっと他に言うこと無いのか。

 ……まあ、いいか。


「俺も何か選ぶか」


 二人から離れて弁当の棚を見るが、いまいち食指が動かない。土曜の朝は限界まで寝ていることが多いから、あんまり腹減らないんだよな。あと、ナナが持ってるパンの量を見て、なんかもうお腹いっぱいみたいなところあるし。


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