土曜日

「採点の時間」(1)

「……くっそ。目が覚めた」


 決戦当日。その朝とも夜とも言えないような、何とも微妙な時間に俺は独りごちる。ナナは寝ているようだ。


 あの後、何の断りも無く全裸にさせられそうになった俺は、折檻の一つでもしようとナナを追い掛け回したのだが、日頃運動不足な俺と、魔法で強化された少女とでは、体力に相当の隔たりがあるらしく、無駄にふりふりした服の裾に触れることさえなかった。その挙句、体力の限界が来てその場に倒れこみ、そんな俺の横に立ってナナはあざ笑うのであった。人生の中でもトップクラスに間抜けな光景である。白雪先輩に聞かれでもしたら半年は笑いものにされるに違いない。


 そんな魔法少女であるが、今はジャージ姿である。


 家に帰るなり服を貸せというナナに、どうしてこいつは俺を脱がせたがるんだと首をひねったものだが、そうではなく、決戦前に例のメイド服をベストな状態に戻すため、それまでは別の服を着る必要があるとのことだった。当然、女物の服など家になく、特に考えもせずそれをあてがったのだが、風呂上りで上気したナナと、あらゆるところが余りまくったそのジャージは、なんだろう、露出も殆どないのに、如何わしさの塊としか言いようがなかった。


 さて、どうしたものかね。

 こういう時に寝よう、寝ようと躍起になるのは良くない。却って目が覚める上に、仮に眠れたとしても寝起きが悪くなる。雑多なことに思いを巡らせて、自然に眠りにつくのを待つか、そうでなければ起きて活動を始めるかのどっちかだ。まあ、前者かな。ナナが寝ているのに電気をつけるわけにもいかない。


 今日の事でも考えるか。何となく正午に設定した対戦だが、もうちょっと早くても良かったかもしれない。このまま起き続けていたら無駄に疲れてしまいそうだ。そういえばデザートと白雪先輩は見に来るのだろうか。大学は土曜日も授業が有ったり無かったりするそうだが、あの先輩は有っても普通にサボりそうだ。空はどうだろう。土曜日も部活だから多分無理だろう……。


 あれ?


 今、空の事考えてたか? 何で空が来るんだよ。くっそ。これはあれだ、眠りに落ちる前に訳の分からないことを考えるやつじゃないか。ツッコミなんかいれずにそのまま考えていたら眠りにつけていたかもしれない。何てこった。余計に目が覚めたじゃないか。


「……もう、起きるか」


 すっかり二度寝を諦めた俺は、たっぷり五分程使って体を起こすが、何ともいえない倦怠感が纏わりついて離れない。ぐっすり眠れる(遊び疲れた子供みたいな)ナナが羨ましい。


「よいせっと」


 立ち上がった序にカーテンを開く。これまた何とも言えない微光が放たれて、ぼんやり部屋の中を照らす。


「……んんー」


 足元からナナの声。起こしてしまったか?


「ナナ?」


「……ううーん。むにゃむにゃ、もう食べられません」


「いや、それは起きてるだろ」

 

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