「キャスト・オフ!」(3)
「そこはそれ。隙を突くとか、やりようはある。というかあのメンタルを考えたらどうにでもなる気がする」
「そういうもんですか? なーんか手馴れてますね」
さあてね。
「もしかして、一日空けたのにも意味が有ったりします? 今日の内で何か小細工を仕掛けて、明日の戦いに役立てるとか」
「意味はある。だが、そんなんじゃない。今日は特訓をする」
「とっくん」
言葉の意味が分からなかったのか、変なイントネーションで反復するナナ。はて、魔法界には特訓の二文字は無いのだろうか。
「ああ、すまん。特訓っていうのは、」
「いや、それぐらい分かりますよ。馬鹿にしてるんですか。そうじゃなくて、そんなことする意味があるのかが疑問なんです」
「意味はあるさ。先輩魔法少女からのお墨付きだ」
「へえ、そんな人がいたんですか。是非お会いしたいですね」
会ってるけどね。
「それに、物語にはそういうのが必要なんだよ。様式美っていうのか、とにかくそんな感じだ」
ふむ、と俺から視線を外して何やら考える素振りをする。なかなか絵になっているじゃないか。
俺だって、一日だけの特訓に成果を期待しているわけではない。あくまで目的は気分を乗せることだ。
「物語、いいじゃないですか。確かに落ちこぼれのあたしが、エリートを倒して目的を達成できたら物語になりますね。そっか、あたしが主人公か……」
「そうだ。俺は精々、狂言回しってところだ」
言いながら時計を確認する。まずい、起きてからすでに結構な時間が経ってしまっている。これから着替えて、朝食にして、
「よし!」
「うわっ、ビックリした」
ナナが急に奇声を発して立ち上がる。なになに、なんなの。情緒不安定なの?
「そうと決まれば行きますよ、彰彦さん!」
俺の手を取り、玄関まで引きずられる。何て力だ。
「いや、俺まだ寝間着、飯も」
「そんなこといいじゃないですか! 特訓ですよ! 燃えてきた!」
まったく。スペードの魔法といい、ナナの性格といい、魔法少女は火が付きやすい奴が多すぎではないだろうか。
だけど今は。
「せめて自分の足で歩かせてくれ」
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