「宣戦布告だ。魔法少女スペード」(4)
「なあ、ナナ。あの流星群みたいな魔法あるだろ? 前に此処で使ってたやつ」
「あー。『スターゲイザー』ですね」
そんな名前がついていたとは。星をみるひと?
パロディばっかりじゃないかと思ったが、そうか、魔法界という人間の言葉で定義付けられているのだから、色々と人間寄りになっているという推測は立つ……のか?
「あれってどういう魔法なんだ? まさか本当に星々を落としてるのか?」
「いや、そんなことしたら、あたし処刑されますよ。空気中の塵なんかを集めて固めて、動かしてるだけです」
「念動力というか、超能力みたいだな。それは」
スペードの読心術もそうだが、魔法使いというよりは、超能力者のようじゃないか。もっとも魔法と超能力の違いなんか俺には分からないのだが。
「ああ、そうかもしれません。基本的にあたしたちって、普通の人間とそこまで変わらないので。何でしょうね。『魔法使い』になると自力で飛べますけど、『魔法少女』は道具を使わないと飛べないというか」
ナナは自分の服を両手で引っ張る。
「これが道具の一つですね。それと同時に拘束具でもあります。あまりにも魔力が強い子に一定以上の魔力を発揮させないための」
もっとも、あたしにはその機能は必要ないみたいですが、と寂しそうに呟くナナ。
「んん……。待て待て、こんがらがってきたぞ。結局、素の状態で魔法は使えるのか?」
言いながら、話が脱線していることに気が付く。なんとか元に戻さなくては。
「素、ですか。裸ならある程度使えますし、そっちの方が出力は高いんですが、なにせ未熟なので制御できるかどうか分かりません」
「ほう……?」
「『魔法使い』になれば免許皆伝と言うか、拘束が外れて自由に魔法が使えるようになるということです。なれなければ全く使えなくなるんですが」
スノーホワイトの事を思い出す。どうやらそっちも抜け道が無いわけではないみたいだぞ……とは言わない。
「……自転車の補助輪みたいなものか」
「なるほど! そっちの方が良いですね。うわー、失敗したかもしれません」
額に手を当てて本気で悔しそうにするナナ。表情がころころと変わる。こういうとこは子供っぽいよなあ……。何歳なんだろう、本当に。
いかんいかん。また脱線してしまう。
本題に戻らねば。
「とにかく、今はその、『スターゲイザー』使えるんだよな?」
「はい。え、使うんですか? 多分スペードかっ飛んできますよ?」
「ああ、それでも、頼む」
「え? 何で? 本当に撃ち殺すんですか? あたし、そこまでは憎んでないですよ?」
言いながら両手をわちゃわちゃさせている。本気で慌てているところを初めて見た気がする。
「俺もそこまでは思ってないけど」
「はあー。彰彦さん、言葉が足りないとか言われませんか?」
少し考えてみたけど、心当たりがありすぎるから考えるのをやめる。そういうのは君野と空だけで充分だ……充分だった。
「まあ、良いですよ。何か考えがあるんでしょう。付き合いますよ」
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