第1話「蒸気に包まれし都市」

ピタッと、機関部の音が止まった。

蒸気に包まれてから早9時間

景色も変わらぬまま、クリスと他愛も無い話をしていた。


相変わらずだが、この汽車には人の気配がしない。

どうやら無人列車のようだ。


「レイバ・セントラル、レイバ・セントラル、到着後はしばらくその場で待機願います。」


ここにきて初めて聞いた人の声だ。

どうやらもうすぐ到着するらしい。


「で、到着後は秘密裏に和解交渉だっけか?」


「ああ、そうだ。一応日本国側もある程度は妥協するようだ」


どうやら、そのようなのである。

未知の文明を持っている国と対立というのは日本国としても少々分が悪いようだ。

というか、日本国は戦争国家では無い。憲法で戦争自体ができないのだ。


「米国側はそれなりの用意はするとのことだった。

が、しかし相手は核攻撃をも無効化する技術があるそうじゃないか

この宣戦布告は、我々を降伏をさせるためのものだと分かっている」


「米国側までが弱腰だとは情けない話だな」


と、話している内に甲高いブレーキ音がした。

どうやら目的地に到着したようだ。

まだ蒸気に包まれていて周りがよく見えないが

窓からは、うっすら街灯の光が見える。


「ここがレイバか…まったく、ロンドンと全然変わらん雰囲気だな。」


「レイバをロンドンと一緒にするでない!!」


どこからか幼い声が聞こえた。

と思った瞬間、汽車のドアが乱暴に開けられ黒服達に強引に引っ張り出された。

そして、そこにはまだ10歳位の女児。どうやら、さっきのの声はこの娘のようだ。

女児は口を開くと荒々しい口調で話した。


「あなた達が、日米から送られてきた交渉人ね、早くついてきなさい。」


なんか扱いが酷い気がするのは気のせいではないだろう、、、

しかも女児にあんな冷たい口調で話しかけれるなんて、、、信じられない国 レイバ


「あ、その前に」


クリスが驚いて一歩足を引く

「私の身柄は米国側によって保護されているのですぞ!もしもこの身になにかあれば」


「なにを焦ってるのよ、ただの身体検査よ、この国の外部生成物質の持ち込みは厳しいのよ」


そういって、黒服の男共に全身をコレでもかと言う程隈なく調べられた後

女児に連れられ小さいアパート?一室に入った。


「日米外交官、その小さいお耳でよく聞きなさい。詳細は後で話すけれど、この交渉取引はレイバ国としては非公式、我々新政府ネオンによって行われているものなの。」


「だから、窮屈で申し訳ないのだけれど、この部屋で待機してもらうことになるわ。」


「数日に渡る交渉の間、衣食住は不便の無いようにするわ、申し訳ないわね。」


ポカーンとしていた俺だったが、なんとなく事情は理解した。

そうだったのか、つまりは宣戦布告をしたのがレイバ国

今回交渉を持ちかけてきたのが新政府ネオンということなのか。


「で、そのネオン政府はこちらに対して何を要求する気なのだ?レイバ国はなぜ我々に宣戦布告を?君達の技術力はどこから?」


「あーもう、うるさいわ、明日から始まる交渉会議で全ての質問は応えられる範囲で答えるわ。」


「それまでは話すことは無いわ。今日はさっさと寝ることね。」


そういって女児はこっちの返事も聞かずに出ていってしまった。

一体ここがどこかも分からないのにも関わらず、狭いアパート?に男二人。

幸い、女児の言ったとおり衣食住は不便が無いようだ。

その証拠に、クローゼットに服がクリスと私の分が一式づつ入っていた。

見慣れない服だ。おそらく、こちらの服だろう。外套や見慣れないスーツが用意されていた。


そういえば、女児の名前を聞くのを忘れていた。

まぁ、明日でもいいか

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少女は蒸気の夢を見る @YukikazeSetuna

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