骨のゆくえ

 2013年9月、二十年つれそった年長猫を亡くした。

 お骨はいまだに手元に置いてある。

 手放すことができなくて。


 分骨した欠片を三日月型のペンダントに封印し、お守り袋に入れて持ち歩いている。

 先日。

 ざんくろーさんの葬儀をとりおこなった葬祭場のお姉さんが言っていた。

「しばらくお手元においてから、土に返す方もおられますね」


 土に穴を掘って、直にお骨を入れて、土に返す。

 今では少し違う意味になっているが、古い葬儀の手順では「散骨」と言う。

 火葬にして、しばらく手元に置いて、土に返す。これをもって葬いの儀式を終える。


 すとんと何かが腑に落ちた。

 そう言う時期が来たのだ。

 帰宅した夫に決意をつげる。

「春になったら、ミルクさんのお骨を土に返そうと思うのです」

「どこに?」

「うちの庭」

 土になれば、あきらめもつく。

 ただ二人で話し合って、掌に収まるくらいの小さな骨壷に分骨して手元に残すことにした。


 とりもなおさずこれは、ざんくろーさんのお骨を今後どうするか決めることでもあった。

 何年先になるかわからないけれど、納得ゆくまで手元においたら、一部を残して庭に埋めよう。

 彼の縄張りの土に返そうと思った。

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