2018年1月7日深夜

 夜が更ける。

 また、魔の時間がやってくる。

 まんじりともしないで付き添った。音が無いと心細いので、深夜のCS放送でマジンガーZ傑作選を流しつつ本を読む。

 浅田次郎さんの「神坐す山の物語」

 

 そして二時が来た。

 庭に出たが、縁台に飛び乗れなくなる。踏み切って飛んでも、後脚が乗らない。

「ざんくろー。抱っこするよ」

 後ろから抱え上げて、縁台に乗せた。持ち上げる時、それでも後脚で踏み切った。

 部屋に戻ると、ソファに乗ろうとする。相変わらず踏み台を使おうとしない。

「ざんくろー、こうだよ」

 自分で四つんばいになって、台を足がかりにして、ソファに上がってみせる。

「あっ、そうなんだ!」と言う顔をして、踏み台を使った。

 いつもの場所にうずくまり、寝る。


 映画「マイドッグ・スキップ」を思い出す。少年とジャック・ラッセル・テリアの物語。二人は親友。スキップはいつもベッドの上に飛び乗って寝る。少年は成長し犬は老いる。やがてベッドの上に飛び乗れなくなって……。

『この子、もう死んじゃうかもしれない』

 むせび泣いて、気を取り直し、本を読む。連作短編なので一編ごとに休み、また不安になる。

 そばにいるしかできない。何もしてやれない。時がすぎるのを待つしかない。火曜日はまだ遠い。確実にざんくろーは弱ってゆく。悔しくて、もどかしくて、嗚咽が止まらない。

 むくりと犬が起きる。

「どうした?」

 どすん、と床に降りて、ガラス戸まで歩く。

「お外出るのね」

 また、抱き上げなくては。準備していたら、ざんくろーは自力で戻ってきた。

「へ?」

 あっけにとられる私を尻目に、ゆうゆうと水を飲み、ホットカーペットの上に寝そべり、「どうよ?」と言う顔をした。

 この子は、強い。もちこたえられる。


 実際、もちこたえただろう。

 連休でさえなければ。


 明け方五時、起きてきた夫と交替する。

「神坐す山」は、読み終えていた。

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