2018年1月6日深夜

 ざんくろーさんは、室内飼いだ。

 トイレの大は庭でする。それ以外に出たい時も庭に出す。カラスを追っ払う。不審者に吠える。近所でバトルしている猫にちょっかいを出す。

 用が済んだら縁台に飛び乗って『開けて開けて』と騒ぐので、ガラス戸を開けて中に入れる。

 この所、夜中の二時ごろに必ず庭に出たがる。私も夜型なので、手を止めて外に出す。

 腫瘤の存在を知ってからは、仕事部屋ではなく、居間で付きそった。

 この日も二時の「出してコール」があり、庭に出す。縁台から庭に降りて、夜の庭を歩き回る。室内からこぼれる明かりに、白い体が浮かぶ。今夜は「うろうろ」が特に長く、寒いのでこたつに入った。

 まだ戻らない。

「寒くないのかな」

 さすがに心配になって猫に声をかけた時、ガラス戸に白い影がうつる。カリカリと爪で引っかく音。

「おかえり」

 温かい室内に入るなり、ぷるぷるっと体をゆすり、出迎える猫に鼻をくっつけてご挨拶。もそもそとこたつにもぐり込む。

 いつものお決まりのコース。

 

 だが、異変が起きた。

 もぞもぞとこたつの中で身をよじり、出たり入ったりをくり返す。しきりにこたつ布団に体をこすりつけ、それでも収まらず部屋中を歩き回る。

「ざんくろー? ざんくろーさん?」

 声をかけると、こっちを見る。鳴きもせず、うなりもせず、ただもぞもぞと動き回る。どれくらいそうしていただろう。

 水を飲み、やっと落ち着いて横になった時は四時を回っていた。ざんくろーが眠るのを見届けて、入れ違いに起きてきた夫に事の次第を説明し、仮眠をとった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る