2018年1月1日〜3日
年末年始は家族水入らずでゆっくりと、おだやかに過ごした。
夫と、私と、猫と、犬。子供はいない。望んだが得られなかった。
毎年、帰省の時は犬と猫はペットホテルでお留守番。だから全員そろって家ですごしたのは始めてだった。
ちゃんとおしっこしてるのか。食べているのか。今までにも増して、注意した。
表面はおだやかだが、胸の内は冷たく重い流れがうずを巻く。夫も言葉には出さないが、同じ不安を抱えている。
病院ドラマはNG。映画は内容が頭に入らない。増してめでたさいっぱいのお正月特番など、とてもじゃないが見ていられる心境じゃない。
ありがたいことに、CS放送でゲームセンターCXの一気放映がやっていた。ファミコンゲームに苦戦する有野課長を見守りながら、一緒に笑ったり悔しがったり。こう言うときは、こう言うのがいちばんいい。
ざんくろーはソファの上のお気に入りの場所に、きちっと座って画面を見ていた。動きがあるから、見ていて楽しいらしい。やがてごろんと寝ころんで、毛布とクッションの間に鼻をつっこみ、寝た。
スピーッ、スピーっと、人間のような寝息をたてて。
「人間みたいだね」
「よく寝てるね」
「みかん食べる?」
「ください」
冷蔵庫を開けたら、ぱちっと目を開けて起き上がる。結局、夫の分を一個と、私の分を一個、ざんくろーさんの分を一個。三個とって、二個むいた。自分で一房食べて、ざんくろーさんに一房あげて、そのくり返し。
「だから二個むいたのか」
「そうです」
うっかりテーブルの上にiPhoneを置き忘れて、いたずらされて、あわてて取り返した。ちょいちょい、と前足で引き寄せて、ばっくりと口でくわえる。牙が画面を傷つけないよう、手帳型のケースを使っている。材質は合皮。本革は厳禁。猟犬の本能がスイッチオンしてばらばらに破壊されてしまうから。それができるだけの顎の力と牙を備えている。
油断大敵。洗濯物を干す時、とりこむ時、音も無く足下に忍び寄り、靴下をくわえて逃げて行く。
テーブルの上にペンを何本か置いておくと、決まって値段の高いのを真っ先にくわえる。
猫と「鼻くっつけてちゅー」してるから、写真に撮ろうとするとささっと離れて知らんぷり。
「ごはーん」
呼ぶと自主的にケージに入り、待機する。扉が閉まってると前足で開ける。
そうして猫と並んで、同じポーズで食べる。たまに猫に自分のドライフードを食べられても、おとなしく見ている。
夕方、散歩に行くと、早足で歩く。こちらもリードを持ってる時は早足で歩く。しかし決して私を追い越さない。
寒い外から帰ってくると、こたつにもぐりこむ。
いつも通りの日々。
いつも通りの幸せ。
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