4#オジロワシのクナシとシマフクロウのエトロが黄色い風船をめぐって喧嘩したこと
「さあ着いたど~!」
嘴からせっかく捕まえた黄色い風船をまた飛ばさないように嘴を最小限に開きながら、オジロワシのクナシは脚の爪で軽く掴んで運んで飛んでいたキタキツネのチャンタを離した。が、
「うあ~~っ」
キタキツネのチャンタはドサッと墜落した。
「ご・・・ごめん!」
オジロワシのクナシは謝った。
「痛たたた・・・ありがとう。」
雪原にズボッと埋まり、起き上がったキタキツネのチャンタは全身雪まみれの体をブルブル振るい落として言った。
「じゃあ君はここで・・・」
「ちょっと待った!」
キタキツネのチャンタはオジロワシのクナシに頼んだ。
「その黄色いゴム風船、僕も・・・」
「やだ!だからさっきも言ったでしょ?ゴム風船は太陽の卵・・・」
とオジロワシのクナシが言い出そうとしたら、キタキツネのチャンタは、
「実はね~ゴム風船ってちっちゃなゴムの袋に吐息を吹き込んで膨らましたものだよ~!君の持ってるゴム風船は吐息よりとても軽いガスを詰め込んだものだからプカプカ宙にういてるんだよ~!」
といい聞かせた。
「えっ?!本当?このこと誰に聞いたの?」とオジロワシのクナシが聞くと、
「僕の母さんからだよ!」
「いや~そうだったんだ!おいらは親から親のそのまた親の伝来でね・・・!」
としゃべってるオジロワシのクナシがどっかの拍子で嘴の黄色い風船を離さないかと、キタキツネのチャンタはクナシの話を聞きながら虎視眈々と狙っていた。
そうこう1匹と1羽が歩きながら話してると、いつの間にか深い森に入っていった。
景色は夕陽がどっぷり暮れ、夜になっていた。
キタキツネのチャンタとオジロワシのクナシは話しに夢中になって、ここはどこなのか解らなかった。
どの位森を深く入ったか。
オジロワシのクナシはキタキツネのチャンタの冗談に笑い転げた。 ・・・とクナシの嘴から黄色い風船がスルリと抜けた。
・・・あっ!今だっ!・・・
慌てたキタキツネのチャンタはオジロワシのクナシがうっかり離した黄色い風船を口を突き出して取ろうとしたが、既に取れない所まで飛んでいき、広葉樹の枝の中に消えていった・・・!
「嘘だろ・・・?!」
シマフクロウのエトロは広葉樹のうろで、こっくりこっくりと眠そうにしていた。
「あ~暇だなあ~腹減ったな~どうしよ~かな~ホーホー。」
「ん?」
シマフクロウのエトロはすぐ下から黄色い物体が浮かんでくるのを見た。
「これは珍し~い!ゴム風船だ~!ホーホー。」
シマフクロウのエトロはまたうつらうつらとしてはっ!と気が付いた。
「もっと上に飛んだら、枝に当たって破裂するぞ!!急がなきゃ!ホー!」
シマフクロウのエトロは慌てて飛び上がり、広葉樹に沿って登っていく黄色い風船の紐をえいっ!と脚の逞しい爪で掴み、黄色い風船が枝上の尖った幹に触れる寸前でぐいっ!と引っ張った。
「ふぅ~~!!危なかったぁ!もう危ないとこで飛ぶんじゃないよ。ゴム風船とやら。ホー!」
シマフクロウのエトロの脚の爪に掴んだ黄色い風船は、月の光を浴びてキラキラしていた。シマフクロウのエトロは黄色い風船の美しさにうっとりしていた。
「古くからの伝説ではゴム風船は“神の吐息を運ぶ球の形の船”と言われてたっけな。久しぶりにゴム風船見るけど、本当に神々しいなあ・・・」
オジロワシのクナシは広葉樹に沿って飛んでいった黄色い風船を追いかけて枝から枝に飛び移りながら、登って登って登って登って・・・
そして頭上の枝にシマフクロウを発見した。
「お~い!シマフクロウさ・・・あっ!!」
シマフクロウのエトロの爪にはしっかりと黄色いゴム風船が握られていた。
「このゴム風船、おいらが・・・」「いや私のものだよ。ホー!」
シマフクロウのエトロはオジロワシのクナシに爪にしっかり握られた黄色いゴム風船を見せびらかした。
「ゴム風船は神の使いなんだよね。手荒に使うと破裂して罰が当たるよ。」
「そんなことわかっているよ!!ゴム風船は最初おいらが見つけたんだよ!だって、ゴム風船は神の使いだから・・・」
「ゴム風船は神の使いなのは私もしってるよホー!ゴム風船は神の吐息・・・」
「いや違うね!ゴム風船は太陽の卵じゃなかったっけ?」
「神の吐息だよ!」
「太陽の卵だよ!」
「おーい、クナシさーん!何してるの~!」
広葉樹の下で置いてけぼりになったキタキツネのチャンタは真上を見上げて叫んだが、ただ上が騒がしいだけで、どうなったのかやきもきしていた。
「だぁかぁら、ゴム風船おいらのだから返してよ!」
「はいっ!風船!」
シマフクロウのエトロは息をいっぱい吸い込んで頬を膨らませて見せた。
「じゃあおいらも風船!」
オジロワシのクナシも負けじと息を思い切り吸い込んで、頬をパンパンに膨らませた。
「もっと大きな風船!」
それに負けじとシマフクロウのエトロも息を更に吸い込んで、頬も胸もパンパンに膨らませた。
「もっと大きな風船!」「もっと!」「もっと!」「も~っと!」「も~っと!」ぜえぜえ。
2羽とも息が苦しくなった。
「いまだ!」
オジロワシのクナシはシマフクロウのエトロの隙を見て、黄色い風船を取り上げようとしたが、
「駄目!」とよけた。
「くれ!」「駄目!」「ちょうだい!」「駄目!」「だからくれ!」「駄目!」「くれったらくれ!」「駄目って言ったら駄目だって!」
シマフクロウのエトロとオジロワシのクナシによる黄色い風船を争奪戦が始まった。
シマフクロウのエトロもオジロワシのクナシも広葉樹の枝から枝へ渡って、黄色い風船を取り合った。
2羽の爪や嘴、そして広葉樹の枝に黄色い風船が何度も触れそうになるが、2羽の激しい羽根の風圧ですんでで避け、破裂しそうでしなかった。
「おーい!どうしたんだい?」
置いてけぼり状態のキタキツネのチャンタは広葉樹の上を見上げてずっと叫んでいたら、いきなりすうっとシマフクロウが現れ、また狩られるんじゃないかとおののいたが、
「おっとごめんよ!」
とかすめるだけだった。
「あっ!ゴム風船!」キタキツネのチャンタは叫んで、シマフクロウのエトロの脚の爪に握られた黄色い風船を取ろうとした。
「おっと危ねえ!」
「ちょっと、それ・・・」
「下にも敵がいたか。」
「敵じゃないもん!僕の名前はチャンタだよ!キタキツネのチャンタ!」
「私の名前はシマフクロウのエトロだよ。じゃ、忙しいからまたな!」
「あっ!ちょっと・・・あ~あ、行っちゃった・・・」
キタキツネのチャンタは上で行われているのは、オジロワシのクナシとシマフクロウのエトロの黄色い風船の取り合い合戦だということが分かった。
「あ~あ、僕も空が飛べたらなあ。ゴム風船を体にいっぱい着けて。そしたらあのシマフクロウやオジロワシをビックリさせてやろう。」
キタキツネのチャンタは広葉樹を見上げてながら、僕がゴム風船持ってたならば・・・とかいろんなことを妄想していた。
しばらくして、広葉樹から無事脱出した黄色い風船は朝焼けの光を浴びて、上へ上へと昇っていった。
広葉樹からシマフクロウのエトロとオジロワシのクナシも出てきた。2羽は黄色いゴム風船を追いかけて飛んでいった。
置いて行かれたキタキツネのチャンタは広葉樹の下で待ちぼうけしていた。
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