3#オジロワシのクナシにキタキツネのチャンタが捕まったこと
ゼニガタアザラシのエーダと別れたキタキツネのチャンタは、黄色いゴム風船を持っていったオジロワシを追いかけていった。
が、このまま追いかけたらオジロワシにたちまち捕まえられて餌食になってしまうだろう。
用心に用心をしてオジロワシに気づかれないようにまだまだ続く流氷を渡っていった。
オジロワシは、流氷の盛り上がった氷に降りたった。
オジロワシは爪に掴んでた黄色い風船を逞しい嘴にくわえ、羽づくろいをして休んだ。
キタキツネのチャンタはいきなり後ろからまわってあの黄色いゴム風船を奪おうかと思ったが、そこで気づかれて襲われる可能性があるので、何かの拍子で嘴から風船が飛ばされないかと、流氷の影で虎視眈々とチャンタはチャンスを伺った。
「ん?」どうやらキタキツネのチャンタはオジロワシに気づかれてしまったようだ。
オジロワシはいきなり脚を前に突き出し、キタキツネのチャンタを掴もうと飛び上がった。
「ひいっ・・・!」
キタキツネのチャンタは間一髪逃れた。
その時、オジロワシの口の黄色いゴム風船が目と鼻の先を通過したのに、チャンタはチャンスをみすみす逃してしまった。
キタキツネのチャンタはその瞬間のゴムの匂いを嗅いだ時、しまった!と同時にゴム風船への執着心が膨らんだ。
オジロワシはまた旋回して、今度は背中から襲ってきた。
オジロワシはキタキツネへの執着の余り、せっかく捕まえた黄色い風船を嘴から離してしまった。
「しまった!」
オジロワシはキタキツネのチャンタの背中をガシッと捕まえた。
痛い!
キタキツネのチャンタはもう終わりだと思った。
気が動転したチャンタはオジロワシに掴まれて飛ばされてる上空で
・・・僕は“えきのこっくす”の予防だと言われて人間に殺された両親の元に呼ばれて行くんだ・・・もっとやりたいことあったのに・・・
と嘆いていた。
「ゴム風船は?」
思わずキタキツネのチャンタは焦りの余り叫んだ「あっ!」オジロワシは嘴に黄色いゴム風船が無いことを気づいた。
オジロワシは鋭い爪からキタキツネのチャンタを離してしまった!
「うわ~~っ」
「ひょいっと!ご免ご免!」
オジロワシは墜落するキタキツネのチャンタを流氷に激突直前に再び爪で摘みげた。今度はチャンタの体の負担がかからないように爪で緩く持った。
「君、ゴム風船って言ったね。」
キタキツネのチャンタを掴んで飛ばしているオジロワシがぶっきらぼうにしゃべった。
「えっ?」
キタキツネのチャンタはビックリした。
「今さっきはごめんね。背中傷ついて無いかな?大丈夫?おいらはクナシっ手言うんだ。」
「僕の名はチャンタ」
「腹減ってたからねえ、君襲ってごめんね。」オジロワシのクナシは何度もキタキツネのチャンタに謝った。
「う~ん・・・君襲わなきゃゴム風船離さなかったのにな。自業自得だな。ごめんね。」またクナシは謝った。
「別にいいよ。気にしてないから。僕も無防備だったこともあるし。」
「おいらはゴム風船が大好きなんだ。」
「僕も大好き。」
「同じだね。」
「何でゴム風船好きなの?僕は綺麗な花みたいで・・・」
キタキツネのチャンタが言おうとする前に「おいらはね~」とオジロワシのクナシは言い始めた。失礼だなと思いながらクナシの話に耳を傾けた。
「ゴム風船はね~太陽の卵だと伝説があるらしいんだ~。空の上の上の上のもっと上のど真ん中でゴム風船が破裂して、そこから太陽が飛び出して来ると伝えられているんだ。」
「ふ~ん。知らななかった。こういう伝説。」
「だからおいらはこの太陽の卵を捕まえて英雄になろうと・・・」
「かっこいいね君!」
キタキツネのチャンタはオジロワシのクナシを誉めた。
「いやあそれ程でも!」クナシは調子に乗っていると、目の前にあの黄色い風船が飛んでいた。
「あった!猛スピード出すぞ!脚捕まってて!」キタキツネのチャンタはオジロワシのクナシの逞しい脚にすがりついた。
「いやあ~~っ!!」
オジロワシのクナシは凄いスピードで黄色い風船に近づき、嘴でよいしょ!よいしょ!と風船の紐を掴もうとした。
「頑張れ!頑張れ!」
キタキツネのチャンタは励ました。
そして・・・
「黄色いゴム風船捕ったど~!!」
オジロワシのクナシは嘴に黄色いゴム風船の紐をしっかりくわえていた。
オジロワシのクナシは嘴で風船を掴んでるのて何も言えないが、キタキツネのチャンタは知っていた。
遂に流氷の海を一気に渡り終え、懐かしい生まれ故郷の大きい大地にたどり着いたことを。
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