Blah Blah Blah

オノマトペとぺ

第1話

とりとめのない話をしよう

オリオン座がよく見える窓の下で、くだらない話をしよう

僕の手よりも少し大きい受話器から、やっと聞き取れるくらいの音量で

とりとめのない話をしよう


置き時計の長い指は、気づけばもう2周目の中盤に入っているし

短い指は、2と3の間でぼーっと立ち止まっている

細い細い針金がカチカチと生真面目に働き続けているのは、ずっと見てきた僕が知っている

遠くではお風呂の浴槽が湯気を立てて怒っている

「早く入ってこい」と言わんばかりに下がる温度を上げつづけている


それでも僕らの言葉は続く

中身のない、外身もない、音素と音素のつながりと、それを積み上げた塊が

この受話器から漂ってくる

僕はそれを吸い込んで、新たな塊を積み上げ放つ

いつしか僕らの言葉たちは、大きな城を作り上げる


とりとめのない話をしよう

寝てしまえば忘れてしまうような、そんな話をしよう

これまでの人生で出会った色々について

これまでの人生の別れの数々について

過去のあれこれをただの事実として

つらつらと言葉を放っていよう

とりとめのない話をしよう


あのオリオン座が薄らいでいく

時計の短い指はいつの間にか3を滑り抜けている

浴槽はもう僕を見放した

変わらないのは僕らのこの音のつながりだけ

さあ、とりとめのない話をつづけよう

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