スーパーファミコンと私
雅島貢@107kg
前書き
スーパーファミコンと私
それで、「ものごころ」をゲットしてからは、それまであまり良く分かっていなかったファミリー・コンピュータに関心を持った。ファミコン買ってよ~、ってなってからファミコンゲット、ではなくって、ファミコンの方が先にある。というのはちょっと特殊な環境だと思うので簡単に説明しておくと、まず俺の叔母は漫画家で、高校生の時分にデビューしたそうである。で、高校生が収入を得たらどうなるか、というと、世の中の流行モノにゴリゴリに手を出す。その一つがファミリー・コンピュータだったということである。
で、母は専業主婦で、買い物とか街遊びが好きな人間である。その人間が父の転勤につきそって森町、北海道の南の方にあるドがつく田舎に引っ越してくる。遊ぶところがない。かといって、家事もそんなにバリバリやるタイプの人間ではない。ってなわけで、暇かろうということで、ファミリー・コンピュータを妹(俺にとっては叔母)から譲り受けてきて、それをやって暇を潰していたということである。
でものごころついた俺は、まずは順当にマリオとかゼルダとかをやっていたのだが、ドラゴンクエスト3には参った。マリオやゼルダ、ゲゲゲの鬼太郎妖怪大魔境なんかは、まあ字が読めなくったってどうにかなる。リンクの冒険ですら、"FAIRY"が何を意味するものかはわからなくとも、あそこの、あれを押せば小さくて羽の生えた飛べるやつになる、ということは分かるが、ドラクエ3はそうはいかない。
それで3歳か4歳の俺は必死になって字を覚えた。最初はつきっきりで読み上げてもらったが、何しろ当時は若いのでわりとすぐに字を覚えて、それからは一人でドラクエ3を一生懸命プレイした。カザーブの塔のカンダタがどうしても倒せなくて、エニックスに手紙を送ったら、「カンダタはムリにたおさなくてもいいよ。ほかのところにもいってみよう」という返信が来た。来たころにはもうカンダタは倒してピラミッドに挑んでいたので、あまりありがたみを感じなかったが、今思うとめちゃめちゃありがたい話だよなこれ。
とにかくそういう意味で、ゲームというものにはかなり早い段階で触れていた少年だったと思う。その割にいまだにゲームがド下手なので、早期教育の有効かどうかは、ある程度持って生まれた資質に起因するのであるなあと思ったりもする。
で、とにかくドラクエ3によって字が読めるようになった俺は、足繁く図書館に通うようになる。
俺の住んでいる家の近くには「あきた商店」という個人商店があって、そこには(当時ですら珍しかったと思う)「貸し本」があって、10円くらいでとびとびの聖闘士星矢を貸し出していた。で、これも面白いなあと思って読んでいたのだが、何しろちいさい個人商店、すぐに在庫が底をついて、それで教えてもらったのが図書館の存在である。
森幼稚園から、送迎バスに乗らずに(これOKだったの凄い時代だよな)、そのまんま森町立図書館に行って、本を読んだり借りたりして帰る。で、最初はまあ絵本とかそういうのを読んでいたわけだが、あるとき雑誌コーナーで、とんでもない本を発見した。それが「ファミコン通信」である。
なんだこの本は!! って思って、確か新刊雑誌は借り出せなかったと思うので、前の号とかを借りてきて、家で弟と読んで、と言っても漢字がいっぱいあるので流石に全部は読めず、でもグラフィックとかを眺めてわーすごいね、面白そうだね、なんて話をしていた。
で、ようやくスーパーファミコンの話になるが、調べたら発売自体は1990年、だから俺が5歳の時にはもう発売されていたことになる。が、そのときはまだ、「スーパーファミコン」というのと、「ファミコン」というのが違うというのもまだあやふやな認識だったし、手持ちのファミコンゲームにもまったくクリアできないものが沢山あったし、ドラクエ4もやらなきゃあならないしで、そんなに強く欲しかったわけではなかった。
ところがドラクエの5が出るっていう。これは、と思った。これは欲しいよスーパーファミコン。とはいえ、当時のスーパーファミコンの価格は25,000円。そんで、ドラクエ5が9,600円。これは今調べて分かったくらいのもので、当時の俺にしてみれば、ぜんぜん現実感がない額であるが、親にしてみればかなり現実的な金額で、まあそりゃあ渋るわな、というのも分かるが、渋られた。で、「三人兄弟全員が良い子にし、かつ三人分のプレゼント権を行使すればサンタさんがプレゼントしてくれるかも」ということになった。
まあ別に契約するまでもなく、当時の俺はわりに良い子だったので、普通に良い子をやって、クリスマス間近。いつものファミコン通信を読んで、俺は唸ることになった。
ファイナルファンタジー5が、12月6日発売だというのである。
正直、ファイファン(当時の森町で主流だった略称である)はそこまで興味がなかった。1-3はやったことがない。それにファイファン四コマ劇場もない。
でも熱烈なファイファンファンはいて、ちょっとやってみたいなーファイファンも、と思ってはいたのだった。悩み、弟と協議を重ね(と言っても当時弟は幼稚園の年長と赤子だったので、特に強い意見は有していなかった)、結局俺はサンタクロースに、スパファミ(当時の森町で主流だった略称である)とファイナルファンタジー5を依頼することにした。
そして12月25日の、早朝。というか深夜。
枕元にあったスーパーファミコンと、ファイナルファンタジー5。
それが俺とスーパーファミコンの出会いだった。
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