第3話大切な人
第3話
大切な人
「ご指名ありがとう御座います。亜美と言います。」
「始めまして、加藤と言います」
亜美を指名して来たのは、同い年くらいの
男性だった。
「君が銀座のキャバクラでNo.1の子って聞いて指名したんだけど、やっぱり可愛いね」
「そうなんですか。ありがとう御座います!加藤さんは何をされているんですか?」
加藤はバックから名刺を取り出し、亜美に渡した。
「自分はね、ここの銀行で働いてるんだよ」
「銀行員さんなんですね!私銀行員大好きなんです。」
亜美はいつも通りスキンシップをした。
「亜美ちゃんのスキンシップはやっぱり凄いな。こんなことされたら常連になっちゃうよ〜」
「本当ですか〜、嬉しいです。」
そうして、加藤はこの日から毎週火曜日と金曜日に来るようになり、お店では常連様扱いを受けるようになった。
そうして、常連になってからおよそ半年経った頃。加藤の様子が変わり始めた。
「亜美ちゃん、ちょっと来週あたりから来る回数減るかも。。」
「えー、どうしてー?」
「最近仕事がうまくいってなくてね。」
「そうなんですね。」
それから、加藤は毎週1日、3週間に1度、1ヶ月に1度、2ヶ月に一度と度々回数が減って来た。
亜美も日に日にお金が貯まって来ていたので、あと半年したらキャバクラを辞めるつもりでいた。
そんなある日の事だった、亜美のところに一本の電話が入ったのだ。
それは、入院していた母からであった。
「もしもし、亜美元気かい?」
「うん、どうしたの?」
「実はね、元気になってきたから、来週一時帰宅出来るって先生に言われたの」
「良かったじゃん!じゃあ、準備して待ってるね」
電話を切ると亜美は今週いっぱいでキャバクラを辞めようと心に決めた。
そして最後の日、運良く加藤が現れた。
「あ、加藤さんー!」
「亜美ちゃーん、会いたかったよ。最近どうー?」
「私も会いたかった!あ、あのね、ちょっと言いづらいんだけど」
「え?どうしたの?」
「実は私ね、今日でお店辞める事にしたの。」
「え?どうして?」
「実はね、ママが元気になって家に帰って来るから、当分は一緒にいてあげようと思う」
「そうなんだ。じゃあ、最後だからドンペリ入れてあげるよ。」
「いや、無理しなくていいよ。大丈夫なの?」
「最後だから、自分も亜美ちゃんのお陰で本当に楽しい時間を過ごせた。だから最後にお礼をさせてほしい」
亜美は少し泣きそうになった。
亜美は加藤の手を握り目を見つめた。
「私も加藤さんと出会えて本当に良かった。」
亜美は加藤さんにスマホを見せた。
「加藤さんだけに教えてあげる。私のプライベートの連絡先。いつでも連絡してきてね」
「え?本当に良いの?」
「うん。受け取ってほしい」
「ありがとう」
そうして、亜美は最後の仕事を終えた。
だがその次の日、早速加藤から『少し話したいことがある」と連絡が来た。
しかし、亜美は「母が来るから、また落ち着いたら連絡します」と連絡を返した。
そうして、それっきり連絡がなく3ヶ月が経った。母も元気になり、普段の生活を送るようになってきた。そんな中加藤から着信が入っていた。
「もしもし、電話に出れなくてごめんね」
「忙しい時にごめん、ちょっと相談したい事があって」
「どうしたのー?」
「今日会えない?」
そうして、約4ヶ月ぶりに加藤にあった。
しかしそこにいたのは、亜美の知っている加藤ではなかった。
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