招集 8

「そろっていますね」

食堂の扉を開けた女性はそう言った。

いつもより少し広いテーブルには4人の少女が座っている。

左右にそれぞれ二人ずつ、正面から向かって右斜め前にはニリスが座っている。その奥には小柄で、赤い髪を短いツインテールにしたつり目の少女。向かいには明るい茶色のショートヘアで、やや背の高い少女。そしてエナの向かいには、淡い桃色の髪がローツインテールになった、ふんわりとした雰囲気の少女が座っていた。

「初めまして。私はレコ・モフィです。これからしばらくの間、あなたたちと暮らすことになります。よろしく。」

ニリスのものとはまた違う、透明感のないはっきりとした白い髪を低くシニヨンにし、三つ編みのループで括っている。見ているこちらがハラハラしてしまうほどに細いその肢体にはニリスたちと同じ制服をまとい、長めの前髪がかかった目を優しげに細めている。

「私からの話は朝食を頂きながらにしましょう。食べ終わったら、皆さんの自己紹介も聞かせてくださいね。」

言うが早いか、テーブルに朝食が運ばれてくる。

こんがりとトーストされたライ麦パンにミルク、新鮮な野菜に生ハムがのったサラダ。ピッチャーにはパセリのドレッシングが入っている。最後に、あたたかなオニオンスープが運ばれてきた。

「残念ながらデザートと呼べるものはないのだけれど。ごめんなさいね、私スイーツを作るのって苦手なの。」

肩をすくめてレコがそう言う。

「そこにいる人たちが作ってるんじゃないんですか?」

ツインテールの少女が、料理を運んできた人々に目を向けた。

「そうね、まずはそこから説明しましょう。」

今度もレコが言い終わらないうちに、料理をテーブルに並べ終えた人々がパタパタパタッと彼女の両脇に並ぶ。なんて軽い動き、軽い音なのだろう。ニリスが感心していると、レコは説明を始めた。

「彼らは全員ウキラ。精霊人形です。お人形はあなたたちの先輩の手作りで、私も知らないくらい昔の方のものよ。コアにはそれぞれ違った宝石を、動力には私の魔力を使ってもらっています。」

衣装は精霊の好みで着てもらっているのよ…と続け、そのまま全員に退室してもらう。

「ずうっとレコさんが魔力を与え続けているんですかぁ?」

ふんわりとした印象の少女が、ゆったりと尋ねる。

「ふふ、そんなわけないでしょう?いくら私でも疲れてしまうわ。基本的には自然からのエネルギーで十分なんだけれど、たくさん働いてもらうときにはより多くのエネルギーが必要になるし、そもそも私たちのために働いてもらっているのだから、チップをはずまないとね。」

ここでの生活は彼らが世話をしてくれるから、感謝を忘れないようにと付け加えて、レコは朝食をとり始めた。少女たちも続いて食べ始めるが、これから始まる話に意識が向いてしまい、何度もレコのほうを見る。

「さて、貴方たちの先輩の話をしましょうか。」

おいしそうに朝食をとりながら、たった一人の先輩が話し始める。

「あなたたちの先輩は、全員ここで死にました。」

知っている。

だから、これから起こることも、たいてい予想がつく。

「もちろん私もそのうち死ぬわ。そして」

これが、私たちの仕事。

「あなたたちにも、ここで死んでもらわねばなりません。」

やさしい微笑みが消えた。

それは、レコが初めて後輩たちに見せた、本気の表情だった。

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