四十六之剣 「終焉前」
ほんとは、テラを傷つけたくはなかった。言葉で、済むならそれが一番だったけど、どうやらそれも出来そうになさそうだ。テラを止めるためには、戦って動きを止めるしかない。
''光''
簡単じゃない。テラを止めるのは、こっちが全力を出して初めて、止められるくらいだろう。なら、最初から、全力で。
ソラは、光の剣を作り出すと、目を閉じ、猛烈なスピードでテラに襲いかかります。今まで防戦一方でしたが、攻めの姿勢を見せるソラ。動きもなんとなくはやくなったような気がします。
テラは、目でソラを追うことなく、まっすぐ正面を見据えています。その場を動くことなく、落ち着いた様子で立っている。まだまだ余裕ということでしょうか。
「遅い」
テラは、ソラの振り下ろされた剣先を聖剣で優しく受け止めると、闇の魔力を注ぎ込み、ソラを吹き飛ばします。強力な闇の魔力に弾かれ、ソラは、体勢を崩しかけたが、うまく地面に着地し、体勢を整える。ソラも、一筋縄ではいかないことを分かっていたふうです。次、どうするべきか、すぐに考えを巡らせます。
単調な攻撃じゃ、すぐに防がれてしまう。無駄に、攻撃しても、こちらの体力が失われるだけだろうし。どうすれば。
ソラが、考えていると、考える隙間など与えはしないとばかりに、テラが攻撃を仕掛けてきます。
「よそ見をするな。前からお前はいちいち考える癖がある。その隙をつかれてしまうんだよ」
テラの、速攻をギリギリのところでかわすソラ。ソラのほんの数ミリのところで、かわします。かわさなげれば、頭が飛んでいってもおかしくはありません。まさに、そんな惨劇が起こりうる危険な状況だ。
やばい、明らかに、テラの方が俺よりも速い。
攻撃をいとも容易く防ぎ、ソラに反撃。圧倒的な力の差がありそうですが、ソラは、無事にテラを倒すことができるのか。
なら、ソラが防ぎきれない強烈な一撃をくらわせるまでだ。
ソラは、いったん距離をとり、ありたけの光の魔力を光の剣に注ぎ込む。あまりの魔力の高まりに、剣が凄まじい光を放ち、周囲を照らす。
テラも、この一撃を食らえば、ただではすまないと思ったのか、ソラ同様、剣に闇の魔力を注ぎ込みます。お互いの全力をぶつけるつもりです。
そしてーー一斉に二人は駆け出すと、剣を振り下ろす。その瞬間、強烈な魔力と魔力のぶつかり合い、とてつもない衝撃と轟音と破壊の嵐が襲い来る。
果たして、結果は。強烈な破壊音が響き渡った後は、とても静かです。まさに、嵐の後の静けさ。シーンと静まり、村の上方から吹いている風の音だけが耳に入り込んでくる感覚です。二人の剣のぶつかり合いが砂を巻き上げ二人を覆い隠している。二人の様子を見たくても見れない状況が続いています。
ここで、立っているものが勝者。どっちが、立っているのでしょう。ソラか、それとも、テラか。どちらが立っていてもおかしくはありません。
おっと、舞っていた砂が徐々に晴れていき、二人の様子が鮮明に浮き彫りになっていく。誰か立っている。なんとか、剣で体を支え立っています。シルエット的にはテラな気がしますが、ソラかもしれない。きっと、ソラに違いない。だって、この物語の主人公なのですから。そうだよね。
いや、違います。やっぱり、テラです。テラが、立っている。そして、テラの目の前の地面には、ソラが倒れています。これは、予想外の展開です。
「ソラ、俺の勝ちだ。俺は、全力のお前に勝ってみたかった。お前は、勝ち負けなんてくだらないと言うかもしれないが、お前が俺に憧れていたように、俺もお前をどこかで憧れていたんだ。どんどん成長するお前の姿を見て、俺なんか簡単に追い越していくんじゃないかったって、不安になった時もあった。だが、俺は、この戦いで安心できた」
地面に、倒れたソラを上からテラは、見つめながら言います。一方、ソラは、息がありますが、身動きがとれずなんとか意識を保っている状況。
「やっぱり、はぁ......、はぁ......、テラは強いな。はぁ......、かなわねーわ」
苦しそうに、息を切らしながら、ソラはテラを見つめながら言った。
そろそろか。
テラは、そんなことを考えた直後、村の上方から、何か強大な何かが、雄叫びをあげる声が響き渡る。それも、一体だけでない。声からして、三体はいます。一体、何者でしょうか。
「ド、ドラゴン ......」
ソラは、思わず驚き声を漏らす。村の上にぽっかり空いた穴から、三体の巨大なドラゴンが首を伸ばしソラたちの方を眺めている。目が血走っていて完全にいってしまっています。
あのサイズだと、ひと口でソラたちをひとのみできそうです。しかも、口元からは、鋭利な牙を覗かせ、よだれを垂らしている。頑丈な鱗が全身を覆っているため、剣とかで、攻撃しても逆に折れてしまうのではないかと思うくらいです。恐ろし過ぎる。
「そろそろこの戦いを終わりにしよう。死んでもらうぞ、ソラ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます