四十四之剣 「光剣」
「やっぱり、強い。テラは。でも、俺も、負けてられねーな」
ソラは、剣を地面に突き刺し、それを支えにして、傷ついた体で立ち上がる。たった、一撃の攻撃ではありましたが、ソラに大きなダメージを与えていたようです。ですが、この強烈な攻撃がソラの闘志を燃え上がらせる。
「やっと、俺とやる気になったか。見せてみろよ。お前の今の実力を」
ソラは、地面を思いっきり蹴り、テラに急接近すると、剣を振り下ろす。テラは、当然のように、ソラの速攻を剣で受け止め、反撃をくり出す。ソラも負けずと、テラの攻撃を防ぎ言います。
「昔を思い出す。お前とこうやって、剣の修行をしたことを」
テラは、剣に力を入れ答える。
「そんな時も確かに、あった。だが、今はどうでもいいことだがな」
「どうでもいいことなんかじゃない。俺は、お前がいたから、強くなれたんだ、落ちこぼれな俺でも。楽しかったんだよ......」
ソラは、かつての日々を思いだし、剣を握る力が自然と弱まる。テラは、ソラが手の力を緩めた一瞬を見逃しません。剣を勢いよく振り、ソラの持つ剣を弾き飛ばします。ソラの剣は、宙を舞い地面に音を立てて、地面に落ちる。
剣を弾き飛ばされ、ソラは気が動転する。テラは、一歩でソラとの間合いを一気に積めると、剣を振り攻撃を加えようとしています。
テラは、本気だ。俺を本気で斬るつもりだ。
ソラは、とっさに、テラの闘志を感じとり目を瞑り、体全体を覆う光の魔力を強く感じとる。
"0の構え"
通常、ソラは、最大限の速さを出すことができません。速さに、体がついていかず、転んだり、壁にぶつかったりと制御できないためです。ですが、目を閉じ集中力を高めた状態だと、周りの光の魔力を通じて、周りの状況、今、自分がどのような状態であるかを瞬間的に感じとることができます。それこそが、0の構え。
ソラは、とっさに上体を反らし、テラの剣を回避します。
「避けるだけか。ソラ。さっきの府抜けた剣はなんだ。俺を斬るつもりがないようだが、俺はお前を本気で斬る。あの頃の、ただ剣を振り回すだけの遊びじゃないんだよ」
テラは、ソラの動きを感じとり先読みする。そして、ソラに向かって迷わず剣を横に振る。
「分かってる。でも、俺はお前を本気で斬るなんてできない」
テラが、剣を振り終える直前、ソラは悲しそうな表情を浮かべ言います。
「そうか、ならばこれで終わりだ」
剣先は、ソラの左腕の辺りに達し、切り裂く。幸い、ソラの腕が切り落とされることはなかったですが、深い傷口をおってしまいました。
「終わらない!!俺は。もう、やめてくれ。この戦いに何の意味があるっていうんだよ!!」
「俺は、魔王側の人間。お前の敵だ。それに、俺自身、剣神と呼ばれるまでになったお前と本気で一度、戦いたかった。剣神と呼ばれるのにふさわしいのは、この俺だということを証明できる!!」
「テラ、お前、そんなことを......」
「ソラ、お前に苛立ちを覚えていたんだ。お前に剣技を教えたのも、能力があるのも俺なのにソラが剣神と呼ばれた。お前がいなければ、俺が剣神として呼ばれるはずだった」
「なら、何で俺に剣技を教えたんだよ。落ちこぼれの俺なんて、ほっといてくれたって良かったのに」
「以前のお前は、奴隷として生きていた俺と似ていた。世界に失望し、だけど、どこかで温もりを求めているような顔をしていたんだよ。哀れだったんだよ。だから、教えた。それだけだ」
「お前も、同じような道をたどってきたなら、イマリ村のみんなの温もりを知っているはずだろ。どうして、魔族たちに村のみんなを襲わせることをしたんだ?」
「最も大切な者のために、大切な者を犠牲にしなければならなかった。俺は、何があっても魔王にこの身を捧げる、そう決めたんだ。そして、俺は、お前とも戦う。お前に魔王の邪魔をさせやしない」
テラは、剣を握りしめ、剣を失ったソラの方に向け駆け出します。ソラは、抵抗手段がありません。このままでは、ソラの命が、親友ソラによって奪われてしまいますが。
カキーン。
ソラに、考える隙がないほどの短い時間で周囲に響き渡る金属音。テラの剣が、何か固いなにかにぶつかった音です。
「俺も、大切な者のために戦ってんだよ。だから、負けられねーんだよ、こっちも」
ソラの手元には、剣があります。相変わらず、弾き飛ばされた剣は地面に転がっていますが、一体、どういうことなのか。よくよく、見てみると、ソラの剣は、神々しく輝いています。
この輝きは、かつて、イマリ村で見せた光の剣。あの時は、テラの魔力を使い、魔王を倒すために、巨大な光の剣を使用していました。今回は、エレムからもらった短剣を媒体にして、光の剣を生成し、剣先を伸ばすことで、通常使用している剣のサイズくらいの剣になっています。
「大切な者とは、ポアルのことか?」
「ポアルだけじゃない。イマリ村のみんなのことだ。だから、俺は、お前も救いたいと思ってる」
ソラは、決意のこもった目でテラに向かって言った。その直後、テラは、ほんの一瞬ですが、それを聞いて口元が緩んで笑ったように見えました。
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