四十三之剣 「魔剣」

「俺は、お前の村を壊滅させた張本人だ。それでも、お前は、俺を許せるのか」


 ソラは、テラの言うことが未だに完全に信じられないでいます。もしかしたら、テラは嘘をついているのかもしれない。親友のテラがそんなことをするはずがないと、ソラは心のどこかで思っている。


「何で、そんなこと言うんだ。信じられる訳ないだろ。お前がそんな......」


「テラさんは、魔族サイドの人間だよ。僕もテラさんもそうだけど、人間を憎んでいる者は、魔王様に付き従う者は多い。信じられないかもしれないけど、紛れもない事実なんだ」


 ソラとテラの二人が会話を繰り広げる中、平然と何の違和感もなく、エトランゼが会話に参加します。エトランゼにの思わぬお墨付きをもらい、テラは敵なのではないかと本気で思い始めるソラ。


「何で、そこまで、俺を対立させようとする。俺には、お前が意図的にそうしようとしてるように見える」


 エトランゼから、テラに視線を移すと、ソラは言う。


「勘違いだ。お前の信じたくないという気持ちがそう思わせているだけだ。口で言っても分からないのなら、体で分からせてやる」


「僕も、手伝おうか。テラ。てか、僕にもやらせてよ」


 エトランゼが再び、会話に入り込みます。


「お前はいい。手を出すな」


「は~い」


 テラの答えにすんなり従うエトランゼ。意外と素直です。

 その直後、突如、テラは駆け出し、背中の剣を構えると目にも止まらない早さで、ソラに襲いかかります。巨大な大剣を持っているにも関わらず、なんてスピードだ。実は、この剣を見た目によらず、とても軽いのかもしれません。見た目だましなのでしょうか。

 テラが振り下ろした剣を、ソラは剣を抜き受け止める。凄まじい速さの攻撃でしたが、ソラはそれに負けない素早さで攻撃を防ぎます。


「さすがだな。ソラ。剣神と言われただけはある。だが」


 テラは、ソラの剣を勢いよく弾くと、ソラの脇腹の辺りに左手の手のひらを当てる。


 "闇"


「な、なに!?」


 テラの闇の魔力を感じ、驚きのあまり思わずソラの口から声が出る。


 ドゴーン!!!


 テラの触れた脇腹の辺りに、凄まじい衝撃がソラを襲います。その衝撃で、ソラは、なすすべもなく、建物の壁まで吹き飛ばされ、激突する。建物の壁は、亀裂が入り、ぼろぼろに崩れている。衝撃の激しさが目に見えて感じ取れます。

 もちろん、ソラの身体もただではすんでいません。確実に、骨折し、傷口から血が出ています。常人なら、間違いなく知らぬ間に天国に行ってることでしょう。


 ソラは、かなりのダメージを受け、苦しそうに言う。


「何だ。今の攻撃は?」


 ソラの問いかけに、テラは待ってましたというふうに答え始めます。


「手のひらから膨大な闇の魔力を放ち、お前の光の魔力と反発させただけの話だ」


 ソラは、相手と戦う際、常に体に光の魔力を覆っています。光の魔力を使って、相手の攻撃や位置を目で見なくても、把握することができます。さらに、光の魔力を使って、体を強制的に、動かすことで目にも止まらない早さで動いているのです。

 光属性と闇属性の魔力は相対する魔力。触れあえば、お互いに反発します。今回の場合、強力な闇の魔力を流され、反発しソラが一方的に飛ばされたようですね。


「テラ、お前は光属性の魔法を使っていただろ。何で、闇属性が使えるんだよ?」


 実は、テラは光属性の魔法の使い手です。一人が、持てる魔法の属性は生まれつき決まっており、一つの属性の魔法しか使えないはずです。そのため、光属性の魔法しか使えないはずのテラが闇属性の魔法を使える訳がないのです。


「俺が、持っている剣が、魔王ノ聖剣だからだ。魔王ノ剣の所持者は、その剣がもつ属性の魔力を使うことができる」


 ソラは、テラとテラの持つ魔王ノ聖剣を見て、思った。


 おいおい、嘘だろ。そんなのありかよ。

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