三十七之剣 「あがき」
エトランゼは、右足を、左右に揺らし、タナを振り落とそうとします。ですが、一向に、タナは、両手でしっかりと掴まり足から離れようとしない。
タナの身体は、瓦礫に下敷きになったことで、傷だらけで一部、血液がながれています。とても、痛々しい。そんな状態にもかかわらず、右手を使って、男の子を守ろうと必死でエトランゼを止めようとしています。
「なぜ、そこまでして男の子を守ろうとするんだ?」
「街をめちゃくちゃにして、人々を恐怖させるお前には、理解できないだろ!!」
「心外だね。僕も全く理解できない訳じゃない。といっても、ほぼ理解できないんだけど。一つだけ分かるのは、君がここまで、するのは、剣士のプライドなんだろ。剣士としての誇りが、君を動かす。その誇りが、どこまでのものなのか、興味が出てきた」
火竜、奴の短剣をもってこい。
エトランゼは、心の中で念じ使役している竜に指示を出す。どうやら、エトランゼの竜は火竜というようです。確かに、その名のとおり、体中を覆う鱗は激しく炎が燃え盛っています。まるで、竜の形をした炎といったところか。
火竜は、エトランゼの指示通り、地面に転がっていたタナの短剣を取りに行く。そして、短剣を口でくわえ、エトランゼにその短剣を持って行き、渡します。
それを見ていたタナは、皮肉のこもった言葉を吐く。
「私に、その短剣を返してくれるのか?」
「ああ、返してやるよ。こうやってな」
そう言うと、エトランゼは、短剣を握りしめ、高く振り上げます。短剣の刃の先は、火竜の熱で熱せられ、赤みを帯びている。それを足を掴むタナの右腕に向けて振り下げる。
「ぐっ!?」
右腕を短剣で突き刺され、タナは思わず叫び声を上げる。当然のごとく、短剣をさされた右腕に力が入らず、エトランゼの足を握る力などありません。
「ふー、これでやっと、君から解放される」
エトランゼは、タナから目を離すと男の子にほうに向かって歩き出す。このままでは、男の子が危険な目に合うのは、確実。今、ここでエトランゼを止められるのは、タナしかいない。
「待てよ。まだ、おわっちゃいない......」
エトランゼは足を止め、足元を見ると言います。
「あきれるよ。君には」
エトランゼの視線の先には、左手で足を握り締め、必死に痛みを耐えるタナの姿が。まだ、タナは、終わってはいません。
「まだ、私には左手がある!!右手に短剣を突き刺したくらいで、あきらめると思ったのか!!」
「なるほど。楽しましてくれるじゃないか。ソラのサブキャラとしては」
「私の名は、タナだ。覚えておけ」
「タナ、それが君の名か。でも、残念。すぐに忘れてしまうよ。だって、君と二度会うことはないのだから」
エトランゼは、懐から、油を取り出し、地面にうつ伏せになっているタナの全身にその油をかけ、狂気に満ちた笑顔を浮かべる。
さよなら、タナ......。
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