三十五之剣 「潜む敵」

「遊びだと。お前が、やっているこれもか」


 タナは、爆発で崩壊する街の様子と人々の騒ぎ立てる様子を見渡し言います。


「そう、でも、あくまで、今日のメインは、ソラなんだよね。君、確か、ソラと一緒にいたサブキャラだよね。僕を楽しませてくれるのかな?」


 エトランゼは、挑発混じりの言動をタナに浴びせかけると、首を左右に振り、凝り固まった筋肉をほぐす。なんだかんだで、お疲れのようです。


「私は、お前を楽しませるつもりはない!!楽しませる隙なども与えもしない!!」


「ふーん、でも、君、今、隙だらけだよ」


 エトランゼが、そういうと、タナの横の建物がいきなり激しい爆発が鳴り響く。建物の破片が、その勢いで弾け飛びタナを襲う。

 強烈な破片の雨です。常人なら、剣一本では防ぎきれないが。タナの場合はどうでしょうか。


 建物を発火させ、爆発させたのか。あらかじめ、建物に油を塗っていたみたいだな。それにしても、どのように発火させたのか分からなかった。奴から、火の玉が出るなら分かるが、いきなり、建物が発火したように見えた。まずは、あいつの攻撃の仕方を見極める所から始めるべきか。


 意外と、タナは冷静に状況を見ています。そして、タナの剣に、魔力がみるみるうちに、流れ込んでいるようですが、何をするのでしょう。

 まさか、魔法を使うのか。タナが魔法を使うのは、初めてかもしれません。


 “風”


 剣の周りに、竜巻のように風がくるくると、凄まじい勢いで回っています。夏のように暑い季節には、重宝しそうな魔法です。涼しい。

 それはさておき、タナは、風をまとった剣を横に振ると、破片が剣から放たれた風で吹き飛んでいく。ただ、吹き飛ばしただけではありません。破片の雨は、エトランゼに向かって飛んでいきます。まさに、破片の嵐となってエトランゼを襲います。


「ああ、破片がくる。さあ、おいで。僕の胸に遠慮なく、おいで」


 エトランゼは、襲いくる破片を避けようとはせずむしろ、両手を広げ、破片を受け入れている。もはや、理解不能。行動が読めません。

 ですが、破片はすぐさま炎に包まれエトランゼにたどり着く前に消えてなくなってしまった。


「なんて美しいんだ。炎に包まれ消えゆく姿というのは。いつだって、消えゆく炎は違って見える。さて、君は何色に燃えるのかな?」


 破片を防がれ、エトランゼが平気な顔をしていても、タナは、分かっていたふうに剣を構え立っています。


 破片が燃える瞬間、目に見えない何かが大気中をかすかにうごめくのを感じた。まさか、私が戦っているのは、二人だとはな。


 実は、タナはエトランゼを攻撃することが目的ではなく、見えない炎の攻撃の正体を知るために破片を飛ばしていたようです。破片を飛ばした時に生まれる風には、タナの魔力が宿っており、大気中に潜む敵の挙動を感じ取ることができました。


 ならば。これで、どうだ。


 タナは、右手をポケットに入れると、短剣をぎゅっとつかみ取り、魔力を込めると、それを大気中に潜む敵に向かって投げつけた。風の魔力を宿した短剣は凄まじい勢いで飛んでいき、見事に敵に命中します。

 すると、紅色の小さな竜が、急に姿を表し地面に落ちます。さすがのエトランゼも、そちらに一瞬目線が移る。その隙を、タナは逃さずエトランゼの方へ駆け出していきます。

 隙をつかれたエトランゼは、なすすべもなく、タナに喉元に剣を近づけられ身動きが取れない状況になっています。


「どうだ。サブキャラにやられる気分は?」


 タナが、問いかけるとエトランゼは不気味な笑みを浮かべ言った。


「サイコウ!!!!」

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