三十四之剣 「騒然」

 あれだけの黒煙が出てるってことは、ただの火事という騒ぎではなさそうだな。村で大規模な何かが起こっている。となると、リフトを使うのは得策じゃないかもしれないな。


 ソラは、黒煙の方へ走りながら、カエナの方を向くと言います。


「村への行き方は、一つしかないのか?」


「ううん、リフトを使う行き方と洞窟を通る行き方がいくつかあるわ」


「それじゃあ、洞窟から行こう。リフトは、村から逃げる人で集中するかもしれない。最寄りの洞窟から行こう」


「だけど......一番近い洞窟で最低ニ、三時間はかかるかも」


「そんなにかかるのか!?」


「もともと、私たちがいる場所は、魔族たちの侵入口になっていたから、こちら側からは、リフトでしかいけないの」


 ソラたちが話していると、何人かの妖精たちが、ソラたちの方に向かってくる。慌てた様子で、必死に背中の羽を動かしています。村の大惨事から逃げてきたみたいです。


「やばいよ!!今、村が、爆発で大騒ぎになってる」


 妖精たちのひとりが、少し黒ずんだ顔で言います。落ち着きがなく、逃げるのにがむしゃらな様子から、ことの重大さを感じざるを得ません。


「なんで、そんな事態に......」


「よくは分からないんだけど、少年がなんだかの魔法を使って、村の建物を次々に爆発させてるみたい。止めに入ったんだけど、誰もその少年を止めることができないでいた」


 少年。何者なんだ。もしかして、魔族たちの仲間だったりするのか。


 妖精の言う少年とは何者なのか、ソラの中で、思考が駆け巡ったが、ソラは、すぐに考えている暇などないと切り替える。


「今から、その少年を止めに村に向かいたい。リフトは、使えるのか?」


 ソラの問いかけに、妖精は首を横に振る。


「後ろから、見てのとおりたくさんの妖精たちが村から逃げて来てる。リフトは、使えるような状態じゃなかったよ」


「どうしよう......」


 妖精の話を聞いたカエナは、困った表情を浮かべ、ソラの方を見る。彼女に見られているソラも、内心、どうすべきなのか、判断できないでいます。


 さて、どうしよう......リフトも使えないし、洞窟を通って行くにしても時間がかかり過ぎるしな。う~ん。


 腕を組み、ソラは考えながら、目の前から伸びる黒煙を見る。


「一か八か、やってみるか」


 そういうと、カエナと妖精たちになにやら、相談をし始める。一体、何を思いつき、話し合っているのでしょうか。今すぐ、聞き耳を立てて何を話しているのか聞きたいところですが、やっぱりやめておきましょう。後のお楽しみの方が話が面白くなるかもしれません。ならないかもですが。


 ※※※


 村は建物という建物が炎で燃え盛り、辺りは騒然となっている。人々の叫び声が響く中、エトランゼは一人、口笛を吹きながら、その様子を見て歩いています。まるで、遠足気分で歩く陽気な子供のようだ。

 ちなみに、口笛は、あまりうまくありません。風が、意味もなく尖った口から通り抜けているだけです。


「つまらないな。はやく、ソラ、来ないかな。君のために、こんな刺激的な状況を用意したんだよ。はやく、来てくれないと、村を壊滅させちゃうよ」


 と、エトランゼがわがままなことをいっていると、最悪なタイミングで親と離れた一人の男の子がエトランゼの視界に入る。


「おもちゃ、見つけた!!」


 男の子は、エトランゼのただならぬ狂気に触れ、エトランゼの異常性を感じとります。


 やばい、こいつ。やばい、やばい、やばい!!


 男の子はあまりの恐怖に泣き出し、急いで逃げ出します。

 

「あれ、どうして、逃げ出すの?逃げても無駄なのに」


 燃えろ。


 エトランゼが、心の中で、そう言った直後、炎の玉が突然、出てきて男の子を襲う。そして、炎が何かにあたると激しく燃え盛った。


「ええ~、やるね。君」


 エトランゼが、見つめる先にいるのは、タナです。男の子を襲った炎の玉を、剣で防いでいたようです。


「お前は、ソラと戦いたがっているようだが、残念ながら、それは、かなわない。なぜなら、私が、この場でお前を倒すからだ」


 タナは、剣を構え男の子を守りながら言った。


「えー、何それ、面白いね。じゃあ、すぐに始めようよ。刺激的な遊びをさ」


 そういうと、エトランゼは楽しそうに微笑んだ。

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