三十一之剣 「影」
「ソラ、大丈夫か?さっき、叫んでいたみたいだけど」
タナが、ソラの後ろから近づいてきて、言った。
「ああ、なんとか。だけど......かなり後味が悪い」
ソラは、タナの方を振り返ります。デッドワールドと名乗る魔族に、圧倒的な力を見せつけられ、とどめを刺されずに立ち去られた悔しさ。そんな悔しさが、顔ににじみ出ています。
「何があったんだ。これは、カゲツなのか!?」
タナは、地面に見るも無残な姿になったカゲツを見て、驚きの表情を見せる。
「なんて、説明したらいいのか分からないけど、簡単にいうとだな、妖精に食べられたり、カゲツの中から、魔族が出てきたりしてこうなった」
一体、何を言ってるんだ。ソラは......。
「ああ、なんとなくだが分かった気がする。とにかく、二人とも深手を負っている。村に帰ろう」
タナは、少しごまかしながら、そういって、村の方を指差します。
「そうしたいのはやまやまなんだけど、
足が動きそうにない」
確かに、ソラの身体はカゲツとの戦いで傷だらけです。このファンタジーの世界に病院があるならば、すぐに、入院が必要なくらいの傷を負っています。その状況を見て、悟ったタナ。
「仕方ない。私が、ソラを背負って村まで運ぼう。ソラには、命を救われたからな」
タナは、膝を曲げしゃがむとソラを背中に乗せ、歩き始める。背中にずっしりとソラの重みを感じています。
タナも、無傷ではない。カゲツの攻撃を少しばかり受けている。ソラを村まで運ぶのは、かなりしんどいはずです。
「悪いな。タナ。ありがとう」
「いいんだ。別にこのぐらい」
ソラは、タナの背中の上で、安心すると目を閉じ眠ってしまった。極限状態での緊張で疲労が溜まっていたのだから、無理もないのかもしれません。
そんなソラたちの様子を謎の二人が眺めていた。一人は、小柄の少年。もう一人は、フードで顔を覆い素顔が見えない。フードを外してもらえるとありがたいですが、おそらく、さすがにこの時点で素顔は晒さないか。
「ええ~、あれがソラか。面白そうだね。ちょっと、挨拶でも、しにいこうかな」
小柄の少年が、ソラを興味を持った目で見ながら言った。
「面倒なことはするな。俺たちの目的は、魔王ノ聖剣を取りに行くことだからな」
フードの人物が少年の横で言う。静かで落ち着いた声。声からして、男性か。
「も~う、真面目なんだから。てか、あなたは挨拶しなくていいの~?ソラの知り合いでしょ」
「必要ない。魔王ノ聖剣のことだけを考えろ。とにかく、魔王ノ聖剣の一つがこの森のどこかにあることは確かだ。いち早く、魔王ノ聖剣の在処を見つけることが最優先にしろ」
「はいはい、分かったよ。つまんないなー」
ソラ、必ず君に会いにいくよ。君は僕の獲物だからね。
少年は、ソラを見つめながら舌を少し出すと唇を舐めた。
間髪入れずに突如、忍び寄る謎の二人。この二人とソラは、どう絡んでくるのでしょうか。とにかく、今、分かるのは、二人ともまともではないということだけです。
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