狂炎の来訪編
三十ニ之剣 「カエナ」
剣と剣がぶつかり合う音。
風で、木々が揺れ、舞い落ちる葉。
額から流れ落ちる汗。
なんだか懐かしい......。
「お前、臆病な目をしてるな」
幼い頃、こんなこと、言われたことあったっけ。
「よし、俺が鍛えてやるよ」
そうだ。俺は、幼い頃、あいつに剣を教えてもらったんだった。
“テラ”
※※※
魔族の襲撃から、一週間。
ソラは、妖精たちが魔法で治療を施してくれたおかげで、だいぶ身体の傷は塞がり、普通に立って歩けるまでになっています。
森の大木から生える葉の上で、仰向けになって、青くすんだ空を眺めながら、ソラは思いを巡らせている。
今のままじゃ、ダメだ。デッドワールドとかいう魔族に全く歯がたたなかった。それに、カゲツに勝てたのもエレムの力を借りて、なんとか勝てた。このままでは、魔王からポワルや村のみんなを救えない。
ソラは、聖剣の力を与えられた魔族たちにどう対抗していくのか、これからのことを考えている。
魔王ノ聖剣。
ソラの頭の中にそんなワードが浮かび上がります。
エレムが言ってた。魔王の持つ勇者ノ聖剣に、対抗するために魔王ノ聖剣を集めろって。確かその一つが、この森のどこかに存在するとも言ってたな。
「あの......私のこと、覚えてますか?」
突然、誰かに話しかけられ、ソラは驚き慌てて立ち上がります。ですが、その拍子に、もたれかかっていた葉がびりびりと紙のようにちぎれ、ソラは落下していく。
「ちょっ、まじかよ!!」
大木の葉から地面まではかなりの高さです。この高さで落下し地面に到着すれば即死亡。ソラの物語は、魔王を倒すことなく呆気なく終わりを迎えてしまいます。
やばい、やばい、やばい。くそー、こうなったら、これを使うしかねーか。
ソラは腰の辺りに身につけていた短剣を手に取る。この短剣は、エレムからもらった大切な剣だ。錆び付いているため、使う機会が今までありませんでした。まさか、ここで使うことになるとは。
婆さん、悪い。もらった大切な剣、折れてしまうかもしれないけど、許してくれ。
ソラは、短剣を大木の側面に思いっきり突き刺し、落下速度を緩める。
「止れーー!!!」
短剣を両手で握り、足裏を大木に押し付け、微妙なバランスを取っている。徐々に、落下速度はゆっくりになり、途中で、止まった。
「はあ、助かった」
「ご、ごめんなさい。私が、突然、話しかけたせいで」
そうやって、ソラに話しかけた人物のは、見覚えのある少女だ。この少女は、そう、妖精の村を歩いていた時に会った占い師カエナです。
「いや、いいんだ。俺が、この森を侮って葉の上で仰向けになっていたのが悪いんだ」
ソラは、ほっとした顔でカエナに向かって言った。その直後、大木が砕ける音がします。どうやら短剣を突き刺した部分の大木が砕けたようです。この辺りの木はかなり年季が入っているため、だいぶ腐敗が進んでいたのでしょう。
そ、そんな!!!
再び、ソラは落下し始めます。今度こそ、終わりか。諦めの気持ちが出てきたところで、ソラはふんわりと、自分の身体が浮遊する感覚を持ちます。
ふと、肩の辺りを見ていると、二匹の妖精が、背中の両翼を羽ばたかせ、ソラを助け出している。
た、たすかった。妖精じゃなくて、天使ってこと無いよな。この光景。頼むから、天国には、連れていかないでくれよ......。
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