二十七之剣 「疾風」
ソラは、以前の彼よりも、ずっと魔力の量が大きくなっています。その魔力には、ソラ自身のものの他に、エレムのものも含まれている。
今、ソラは一人で戦っているという感覚はありません。全身のエレムの魔力を感じ、エレムとともに、戦っている。そんな意識で戦っているため、安心して戦えたのです。
婆さん、力を貸してくれ。全力を出さなきゃ、攻撃を防げそうもなさそうだ。
他者から与えられた魔力は、一度、使えば、自身の魔力と違い、自然回復する事はない。消えてなくなってしまう。
だから、これで終わらせる!!魔族との戦いを!!
ソラは、溢れんばかりの魔力を剣に注ぎ込み、剣は、日が沈み暗闇に包まれた森を明るく光輝く。
隕石のように急降下し、熱を帯びた、カゲツ。
矢のごとく、降り注ぐ幾千もの氷の塊。
これら全てをはね返し、森を守る。そんな強い気持ちを、ソラから感じられます。
「いけ!!ソラ!!剣を振れ!!!」
タナが叫ぶと、ソラは持っていた剣をすかさず横に振る。
その瞬間ーー。
ゴオオオオ。
森全体を揺らすほどの衝撃波が大地と大気を揺らし、とてつもない勢いで疾風が駆け抜ける。
なんて、すさまじい威力なんだ。
あまりの強い風に、タナは、飛ばされないように地面の草を握りしめています。
衝撃波は、上空に向かって放たれ、カゲツと氷の塊に到達するとともに、夜空を覆っていた雲が、一瞬で円を描くように消えていきます。
そして、降り落ちる氷の塊は、衝撃で粉々に砕け散り、どこかに消えてなくなる。
だが、しかし。
カゲツは全く無傷です。ダイヤモンドのごとく硬化した肉体には、ソラの放った衝撃波を受けても、ほぼダメージがない。勢いも、そがれることなく、落下していく。
剣神の全力もこんなものか。今の俺を止めることなどできはしない。この俺自身でもな。
カゲツは、落下しながら、笑みを浮かべています。ソラに与えられた屈辱をこの一撃で全て晴らすことができる。そんな歓喜する気持ちが、顔に現れています。
「今のソラの攻撃がきかないなんて......」
タナは、魔族の圧倒的な力の差を知り、顔を下に向ける。すると、落ち着いた様子でソラは言います。
「タナ、さっきのは、攻撃じゃない。剣を横に振った時にできた、ただの風圧だ」
「え......」
「これから、全力で魔族たちを止める。タナ、衝撃に耐えられるように、すぐそこの木に掴まっておいてくれ」
「ああ......」
これが、剣神の実力。私は、剣神にふさわしくないとソラに言ったことがある。だが、前言撤回しなければならない。私の目の前にいる男は紛れもない剣神だ。
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