二十六之剣 「全力」
あの状態のカゲツには、俺の力を100%出しきった攻撃にすら耐えることができる。今までを見る限り、あの剣士の攻撃では、とうていカゲツにダメージを与えることなど不可能に近い。
エンゲツの心の声からして、やはり、カゲツは、とてつもなく頑丈になった模様。しかも、エンゲツは、全力をまだ、出していなかったようです。
カゲツは、体を変形させ、丸みの帯びた体型になり、助走をつけると、ものすごい勢いでソラの方に転がっていく。
「これで、お前を一瞬で踏み潰してやる!!」
カゲツが転がってきた寸前で、ソラは、横に避け、カゲツの攻撃を食らわずに済む。
直進的な攻撃が多い。動きが単調だ。むしろ、かわしやすい。
カゲツの攻撃は、ソラにとってはそれほど脅威ではないようです。と、思っていると。
“氷×土”
ソラを大きく囲うような形で地面から氷の塊が隆起し現れる。隆起した氷の塊には、傾斜がかかっており、その傾斜を利用して、カゲツは様々な方向に転がる。見ているだけで、目が回ってきます。
右、左、前、後ろ。どこからくる。
ソラは、縦横無尽に動き回るカゲツの動きを注意深く見ながら、剣を構えています。
しばらく、カゲツは、トリッキーな動きで、ソラを惑わしていましたが、ついに攻撃を加える。突然、カゲツの真下の地面が隆起し、カゲツは地面に押し上げられ、大空に向かって高く飛翔します。
上か。
上空に浮かぶ雲を突き抜けた辺りでいったん静止し、風を切りながらソラのいる方向に向かって凄まじい勢いで落下していきます。落下するカゲツの周りは、熱を帯び、真っ赤に燃え盛っている。まるで巨大隕石の落下を見ているようです。これが、落下したらソラだけでなく、森の地形そのものが変わってしまう。
“氷”
さらに、追い討ちをかけるようにエンゲツが、上空に向かって何かをうった。それは、上空で夜空を彩る花火のごとく破裂し、いくつかに分岐する。よく見てみると、底が鋭く尖った氷の塊が何本も落ちています。
これで、終わりだ!!ソラ!!
落下する最中、カゲツは自らの勝利を確信した。
確かに、カゲツの一撃と迫り来る氷の雨、この状況で、ソラが無事でいられるとは思えない。どうする、ソラ。
「こ、こんな攻撃......防ぎようがない」
横になっていた、タナが、両手を地面につけ上半身を起こしながら言う。
タナが慌てる一方、ソラは取り乱すことなく、落下してくるカゲツと氷の雨を冷静に見ている。
「このままじゃ、森が消し飛んでしまう。森の影響を考えて、力を抑えていたけど、そろそろ本気を出した方が良さそうだな」
「力を抑えていた。今までは全力じゃなかったのか?」
「10%」
「10%?なんだ、それは?」
「俺が、今まで出していた力の割合だ」
「それって、つまり、あと90%余力を残しているってことなんじゃ......」
タナが、口を閉じたと同時に、ソラの魔力が急激に高まる。ソラも、残り90%の力を出し、全力を出すつもりです。そして、その力強く暖かい魔力に触れ、タナは、安心した表情を浮かべている。
「私は何もできなくてすまない。ソラ、この森を守ってくれ!!」
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