十五之剣 「苦悩」

 くそ、くそー!!


 どうして、どうして俺は......。


 何が最強だ。


 何が剣神だ。


 魔王に敗れ


 村の人々、大切な人を守れなかった


 廃れて


 やせ細って


 立ち上がるのもやっとな


 自分が最強だと勘違いしている


 愚か者じゃないかよ。



「なんじゃ、お前、急に元気がなくなったの」



 ソラが村の中を歩いていると、エレムが声をかける。


「ああ、今は、少しな、だけど、大丈夫。いずれ復活するから」


 少しじゃと、全然そうには見えんがの......。


「お前は、ソラというんじゃな」


「なんだ、タナとの会話を聞いてたのかよ。ああ、俺はソラだ」


「昔、ここに訪れた剣士が、お前の名前を言っておった。ソラは、強い剣士じゃと」


「強いだって。俺は、弱いよ」


「三年も眠り続けておったのだ。弱くなっているのは、当然のことじゃ」


「三年俺が眠っている間、村の人々は、魔族たちに支配され、今も苦しんでる。俺が弱いばっかりに」


「自分を追い詰め過ぎるでないぞ」


「分かってるよ!!そんなこと!!いちいち、言われなくても!!」


 ソラの中で、焦り苛立ちが湧き上がっていた。ソラ自身、落ち着こうと、その気持ちを抑えようとするが、村の人々が今も魔族たちに苦しめられていることを考えると、抑えることができません。


「そうか。なら、いいが。お前に、渡したいものがある......」


 エレムが言い終わった直後です。

 彼女は、あわてて、両手を口にやり、激しく咳き込む。


 ゴホッ、ゴホッ。


 とても苦しそうな表情を浮かべている。エレムは、かなりの年寄りですが、さらに老けたように見えます。


 血。またか。


 咳き込み、口をふさいだ両手には、真っ赤な血がついていた。エレムは、ソラにそれが見えないように両手を握りしめる。


「大丈夫か!!婆さん」


 ソラは、心配そうにエレムの背中に手をやり、話しかけた。


「大丈夫じゃ。ひとまず、わしの家までついてこい」


 わしには、時間がない。


 ソラ、わしは、何十年もの間、お前のようなものが来ることを待っていたのかもしれないーー。

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