魔族襲来編
十四之剣 「魔族」
妖精の村から少し離れた森の中ーー。
「あれが、妖精の森か?」
「ああ、そうだ」
「わくわくするな」
「ふん、俺は面倒くさくてしょうがないがな」
「だって、人々の悲鳴を今から、聞けるんだぜ。それを考えるだけで、ぞくぞくしてたまらねー」
妖精の森に魔の手が襲いかかろうとしていた。会話の内容からして、やべー奴らに違いありません。
二人は、エンゲツとカゲツ。魔王の手下たちです。魔王に聖剣の力の一部を分け与えられており、並みの魔族のレベルではない。
エンゲツは、ファンタジーの世界ではあまり見られない、魔力の玉を打ち出すための銃を持っている。カゲツは、大男だ。とにかく、デカい。体は、強靭な筋肉に覆われている。まるで、筋肉の塊です。
そんな二人が、今、妖精の森に踏み込む。大変な惨事がこれから起ころうとしています。
「なんだ、あいつら!!」
「あんまり見ない顔だな」
あまり見ない二人組に、妖精たちが騒ぐ。ですが、魔族の手が及んでいないためか、あまり警戒心を抱いていないようです。
「妖精だ」
「妖精だな」
「妖精って、おいしいのかな?」
「さあな」
「決めた。最初の獲物はあいつらだ」
「好きにしろ」
魔族の二人はそういうと、気配を消し、一瞬で姿を消す。妖精たちは、突然、消えた二人を見て驚いています。
「なんだ、あいつら、消えたぞ」
「本当だ。どこっ......」
「どうした?急に」
ない。顔が。首から上がなくなってる。
妖精の一人が、魔族のひとりに狙われ、頭を一かじりされる。
「な、なんなんだ!!!うっ、うわああああ!!!」
一人残された妖精は、全身に戦慄が走り、一目散に背中に生えた翼をせわしなく動かし逃げ出す。
「逃げたぜ、あいつ」
「そうだな」
「いいね、あの恐怖に引きつった顔。たまんねーよ」
「報告されると面倒だ。始末する」
エンゲツは、筒状の武器を構え、ターゲットに照準を合わせると、引き金を引く。周りに響く轟音とともに、妖精の背中の羽に玉が当たる。妖精は、羽を負傷し、地面に落ち、身動きを取れない状態になります。
「分かってんじゃねーか。エンゲツ。一発で殺さねーとは」
「当然だ」
「さあ、こいつもゆっくりいただくとするか」
妖精は、逃げ出そうともがくが、魔族の二人に行く手をふさがれる。
「た、助けてくれ!!う、うあああ、ぶあっ......」
魔族たちは、しきりに手を動かし、口の中に流し込む。
「う、うめー」
「できるだけ、あとを残すなよ」
「言われなくても、分かってる。でもよ、こんなにうまかったら、一人残らずやっちまうかもな」
妖精の森に踏み込んだ魔族の二人。血に飢えた巨悪がソラたちを襲おうと、少しずつ動きを見せ始める。
その頃、ソラはーー。
※※※
俺は弱い。俺は弱い。俺は弱い。
タナに大敗を喫し、魂が抜けたように、村の中をさまよい歩いていた。
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