第6話


 黒い焔が真上に上がり空を覆った。

 一瞬にして世界は暗くなり黒焔に覆われた。

 世界の人々は何事かと続々と家から外に出てくる。

 人々が騒ぐ中、この異変に気づいたのはわずか二人。

 勇者と魔王であった。

 魔王は感じとることは出来たがその正体が何かは分かっていなかった。

 だが勇者は違った。

 勇者はこれが魔神王直属護衛隊、五神の王だということを瞬時に理解した。

 勇者の額には汗が滲み出て今にも倒れそうな程顔が真っ青になっていた。

「皆!魔族への攻撃をやめ、直ちに撤退しろ!!」

 勇者は怒声にも似た大きな声で言い放った。

 勇者軍は魔王城から続々と撤退して行った。

「アルギス司令官がやってくれたんだ!」

 魔族は助かった。

 しばらくすると暗雲は晴れていき、空は快晴に変わった。

 人々は何事も無かったかのようにいつもの生活に戻っていった。


 アルギスが目を覚ますと何やら誰かの話し声が聞こえてきた。

「......から、今すぐ行きましょうよ!」

「焦るな。我々は女神族の封印により魔力も体力もすっからかんだ」

「ほんとにあんた達うっさいわね。とりあえず魔力と体力を回復できる場所に行きましょ」

 アルギスの意識が完全に戻り目が完全に開くとそこには5人の魔族がいた。

 その体からは禍々しいオーラと殺気が溢れ出ていた。

「とりあえず......こいつ喰う......」

「そーっすね。多少の魔力は戻るかもっすよ」

 アルギスは瞬時に理解した。

 喰われて死ぬと。

 逃げようとしたが息をする間もなく殺された。

 手足はバラバラに骨は砕かれ内蔵や脳みそ、血が辺りに散乱していた。

「うーん。微妙すっね。味はまずいし魔力は少ししか戻らないし」

「とりあえずガラットに行くぞ」

「「了解」」

 彼らはそれぞれ背中から羽や走りや浮遊でガラットへと移動していった。


 空に暗雲が昇り、魔族討伐作戦撤退の3時間後のことである。

「とりあえず全員集まったか?」

「いいえ。ムーランがまだです」

「ちっ、またあいつか」

 今勇者達による作戦会議が行われようとしている。

「つーか、うちこんなこと?してる暇ないんですけど?」

「おい。そんなこと言ってると殺すよ?」

 1人の獣人は日常会話のように当たり前に言った。

今この部屋には7人の英雄インシオン達が向かい合い座っていた。

 ガチャ

 扉の広く音がした。扉を開けゆっくりと入ってきたのはムーランであった。

「あー遅れてすんませーん」

「どうでもいいから早く座れ。一刻を争うんだ」

 ムーランが席につき皆が集まったことを確認した。

「これより五神の王討伐作戦を行う」

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