失ったもの

レギス視点


ミユ「………レギス様 スウェルタ様が亡くなられました」


レギスはその日………部下のミユにスウェルタの死を告げられた………恐らく証拠として撮ったであろう写真を渡された時にレギスは静かに涙を流す


レギス「レオン………」


スウェルタは1本しかない剣とネックレスを抱きしめて亡くなっていた………レギスが渡したネックレスを本当に大事にしていた証拠………


ミユ「部下達が遺体を運んでくれたそうです」


レギスはそう言われてミユを一緒に遺体安置所に行き遺体を確認


レギス「レオン………」


勿論既に亡くなっているスウェルタからの返事はない………スウェルタは泣いたのかその後をこすられた跡があり涙痕は残っていない


レギス「…………」


レギスはスウェルタを殺したのが親友である人物であると理解した………だがその人に対してある疑問が浮かぶ


レギス その人はミユを「護った」………でもレオンを殺した………


ユレイトのその行動が矛盾しているのだ


レギス ………もしかしたらあの人も殺したくなかったのかもしれない………殺す気なら最初から銃を使って頭を撃てばいいだけの話………


ユレイトは狙撃手としても名がしれているのにスウェルタの身体に残るのは刀傷だけ


レギス 狙撃手としても名がしれている人が一切銃を使わずに戦うほど仲が良かった………もしくはレオン相手には使いたくなかったのか………


それは本人に聞くしかないが相手は敵組織の幹部故に簡単には接触できない


レギス 情報屋のラミに情報提供をしてもらうしかないかな………


そう思ったレギスはミユを連れて首領に外出することを告げラミを探す


レギス「ラミ」


ラミ「レギスか」


レギス「人目を避けましょう ここでする話ではないので」


探し始めて15分程でラミを見つけたレギスはラミと人目を避ける場所に行く


ラミ「で どうした?」


レギス「情報が欲しいの」


ラミ「何の情報?」


レギス「アルファーダの情報」


「アルファーダ」はスウェルタが所属していた組織の名前


ラミ「これをやる 全ての情報を詰め込んであるよ」


レギス「え?」


ラミ「ある人を通じで渡すよう言われていたんだ 守秘義務があるから渡してきた人の名前は言えないが………いずれ分かる」


ラミに渡されたUSBを一瞬見た後に前を見るとそこにはもうラミはいない


ミユ「大丈夫なのですか?そのUSB………」


レギス「ラミから渡されたものだから大丈夫だよ ラミは人に頼まれて渡されたものと言っていたから先に確認したはず」


ラミから受け取ったUSBを持って組織に戻りミユと部屋にあるパソコンで、「情報を詰め込んである」と言われたそのUSBを起動させる………すると画面一面にアルファーダの情報が………


レギス「………本当に全情報が入ってる………」


情報の中には情報を詰め込む前まで受け取ってこなした任務の内容等も入っていて………スウェルタの暗殺もその中に入っていた


レギス「(前科持ち………?)」


ふと前科持ちの欄にユレイトの名前を見つけてそこを開くと………一つだけ組織そのものを破滅に導くであろうことをしていた………


レギス「………首領暗殺失敗………?」


レギス ミユの話では首領には忠実な人だと聞いていたし資料にもそう書かれていた………でも1度首領の暗殺に失敗して捨て駒扱いをされてまた幹部に舞い戻った?


ミユ「前科持ちなんですか………?」


レギス「しかも首領の暗殺に失敗してる」


ミユ「…………」


レギス 恐らく強さでは組織の中でも軍を率いて強い………


しかし銃を使って戦闘をすることを主としているユレイトがスウェルタだけは刀で応戦した………そこがまず1つ疑問に浮かぶ………そしてミユを護り首領の暗殺に失敗してると言うので3つ………恐らく過去を詮索すればもっとあるのだろう………


レギス「首領」


レギスはアルファーダを殲滅する為に首領にUSBを渡して全情報を頭に入れようとするが、アルファーダは組織的にもレミーアよりも圧倒的に力があり、簡単に敵が入り込めないように万全の対策が取られていて警備手薄な場所がほぼない


「カタン………」


不意に物音が聞こえてレギスとミユは無意識に銃を構えて扉の方へ行く………敵はいないらしく気配はないので静かに扉を開けるとそこには別のUSBが………


ミユ「これは………」


レギス「このUSB知ってるの?」


置かれていたUSBに小さく掘られた何かのエンブレムにミユが反応


ミユ「ユレイトの服に刺繍されていたマークと同じです」


ミユはスウェルタに逃がされる前にユレイトの服を見ていたのだ………その服の腕の部分に同じマークの刺繍があったことをミユは言う


レギス「つまりこれはユレイトのものである可能性が?」


ミユ「ええ」


レギス 危なそうだけど………何でこのタイミングで………しかも組織の入り方も知ってるし………


完全に組織の道さえ知られているのだがレギスは取り敢えずでそのUSBをパソコンに刺す


レギス これって………


レギス「首領 このUSB時間帯によって手薄になる場所が示されてます」


首領「でもそれは敵から来たものなんでしょう?」


ラミ「安心しなよ それは本当の事しかかけないようにされてるから」


首領「ラミ………」


いつからいたのかラミは静かに言う


ラミ「そのUSBに入っている画像は分単位でガードの緩くなる場所とルートを示されている それこそ様々なパターンを組んだ上でな」


レギス「どうしてそこまで………」


ラミ「死を望む者がその中の情報に入っているからだ 生きる意味と枷を失った者がいる」


それだけラミは言ってまた消える………「死を望む者がいる」と言い残して………


首領「「死を望む者がいる」………」


レギス、ミユ「…………」


レギスとミユは誰が死を望んでいるのかを予想ができていた………しかしそれは自分達が言っていいことでは無い


首領「この情報を元に組織を叩きましょう」


そう首領が言うのと同時に作戦に参加する者達による組織内情報の暗記が始まった………


〜半年後〜


首領「作戦を元に組織を叩きます レギス 貴方にユレイトの殺害を命じます それ以外の者は生け捕りで捕らえなさい」


作戦参加者「はい!」


レギス「…………」


レギス 自分で言ったことだけれど………


レギスは自分でユレイトの殺害を申し出た………そうでなければレギスはスウェルタを殺した本当の気持ちを知ることが出来ない


首領「レギスは1人で別行動を行い、ミユ率いる暗殺部隊は組織の地下を確認後保護する人がいればその場で待機し、いない場合は私率いる戦闘部隊に合流を」


レギス、ミユ、暗殺部隊隊員「はい!」


首領の号令でレギスとミユ率いる暗殺部隊が先に手薄になっている場所から組織に侵入


ユレイト「…………」


そしてユレイトは誰よりも早くレミーアの侵入に気がついていたが目を伏せるだけ………死を望んている故なのか………ユレイトは死以外何も望んでいない


レギス「ミユ また後で」


ミユ「くれぐれもお気をつけて」


ミユと別れレギスは1人別の道を歩く………情報通に行けばその道は手薄かつ人がいない


ユレイト「随分と遅かったな」


ふとそろそろ目的地につくというところでユレイトがレギスに話しかけ臨戦態勢に


レギス「聞かせて欲しいことがある」


ユレイト「俺にかったら話してやるよ」


レギスの言葉にそう返答したユレイトの目は光がなく虚ろ


ユレイト「来いよ」


その言葉を合図にして2人の戦闘が始まった………



ミユ「始まった………」


ミユは遠くから聞こえた戦闘音でレギスとユレイトの戦闘が始まったのを理解し、急ぎ足で地下の施設を確認


ミユ「!カルス!!」


そして最後として来た地下牢の一室にカルスがいて食事をろくに取らされてくれなかったのか、痩せてしまっていたがなんとか息はあるので急いで助け出し回復薬を入れる


カルス「ミユ………?」


ミユ「助けに来たよ 首領 1人保護した為その場で待機します」


首領『了解 こちらも終わった』


戦闘部隊は早々と仕事をこなし既にアルファーダの首領も捕え残るはレギスのみ



レギス「貴方戦う気ある?」


ユレイト「あるっ……けど……?」


レギス 戦う気があるにしては余りにも力が弱すぎる………なんで………


レギス「力が弱すぎる」


ユレイト「そりゃ延々と力使ってれば消費もするだろ………」


時間にして20分戦っただけでユレイトは負傷で血だらけになり壁に背を預けた状態で立てない


レギス「え?」


ユレイトは力が弱まる位長時間力を使い続けていた………それこそ白鴎家の出生で特殊な力を持っていなかったら何十年も前に死んでいた位………


ユレイト「組織の整備の主電力全てを担う代わりに俺は幹部に返り咲きした………俺の魂が死ねば2箇所以外は完全に整備の主電力が落ちる………勿論補助電力はつくし道も部屋も明るい………だが主電力が落ちればこの城は崩壊する」


レギス「どうしてそこまでして貴方は幹部になろうと?」


ユレイト「スウェルタが幹部だったからだ スウェルタがいなければ俺はここにいなかった」


レギス「でも貴方はスウェルタを殺した」


レギス もう少し………もう少しで聞ける………


ユレイト「憧れた人を好意で殺す程俺は堕ちていない」


それがユレイトの言葉だった………スウェルタはユレイトにとって「憧れた人」であり………


ユレイト「好きな人を殺さなければならない運命を背負わされた………今ではもうその「好き」が友愛なのか敬愛なのか親愛なのか本当の愛情だったのか………俺には分からない」


レギス 嗚呼………この人も………


レギスはユレイトの本当の心を理解した………いつからか憧れが「好き」になり「愛情」に変わっていたことを知らない………否ユレイト自身が知ることを拒んだのだと知ってしまった………


レギス そうでもなければ………


きっと自分の気持ちを抑えきれなかった と………レギスは思う


ユレイト「………これ あんたに返すよ」


ユレイトは血だらけの身体で胸の収納スペースに入れて隠していたのであろうモノを出す………それはレギスに教えてくれたスウェルタの弟の形見であるサバイバルナイフ………


ユレイト「スウェルタがいつも左の胸の心臓近くに収納してた大切な武器………」


レギス「どうしてこれを貴方が?」


ユレイトから武器を受け取りそう聞く………もう終わりが近いのかユレイトは酷く眠たそうな表情


ユレイト「首領に渡したくなかったのと俺が個人的に渡したかったんだ………スウェルタが愛したあんたならこの武器を蘇るであろうスウェルタに渡せる………そう思った だから情報をUSBに取り込んで渡した………あんたなら俺を殺すと思ったから」


レギス「え?」


ユレイト「………俺が望むのは死だ」


レギス ユレイトがあのUSBを………?


レギス「………何故 その情報を私達に?」


ユレイト「言っただろ?「あんたなら俺を殺すと思ったから」」


レギス「それだけ?」


ユレイト「生きる意味と枷を失った スウェルタを殺さなければならない運命に抗えず失った以上生きる意味はない」


ユレイトの瞳の中にある寂しさや悲しみを知ったレギスは「最後の願いは?」と聞く


ユレイト「殺してくれ」


レギス「………わかった」


ユレイトの言葉にレギスは刀を持ち直し振り上げる


ユレイト「ありがとう そして すまない」


ユレイトの最後の言葉を聞きながらレギスはユレイトを斬った………致命傷を受け出血も酷かったユレイトは即死しまだ魂は生きているのか電力は落ちない


レギス「首領 ユレイトの死亡を確認しました」


首領『了解 今ミユがそっちに向かっているから合流して』


レギス「はい」


首領に連絡をしてレギスはミユ達が来るのを待つ


レギス きっとレオンが蘇ったとしてもその心全てが私で埋まることは無い………レオンには親友であるユレイトと過ごした記憶がある………ユレイトに殺された記憶も………きっとユレイトの本当の心を理解していたはず………


レギスはスウェルタの心を自分で埋めることは出来ないと思った………例え埋められない部分が1割であろうと………全て埋めることは出来ないのだ


ミユ「レギス様」


レギス「ミユ と………カルス?」


ミユ「囚われていたのです 回復薬を入れたので少しずつ回復はしていますがまだ立つのも危ない状態です」


ミユの肩を借りて何とか歩けているのであろうカルスはユレイトを見て悲しい顔をする


カルス「………ユレイト様」


ミユ「カルス………」


カルスはミユの肩から離れてユレイトの方に足から崩れながらいく


カルス「死を望んでいたのは知っていました………スウェルタ様を亡くしてから貴方は貴方らしさをなくし本来の自分に戻った………そんな貴方に俺は救われた………貴方には届かないとしてもどうか言わせてください………助けて頂きありがとうございました………こんな俺でも護ってくれてありがとうございました………次の世で味方として過ごせる日が来るのことを切に願っています」


カルスはそう言って1本の赤い薔薇をもう事切れているユレイトの足元に置く


ミユ 貴方もスウェルタ様と同じ………私で心を埋めることは出来ない………


そしてミユもまたレギスと同じ………心を自分で埋めることは出来ない





レギスは大切なスウェルタとその心の1割を失い


ミユは大切なカルスの心の1割を失った………







更新が遅れて申し訳ありませんm(*_ _)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る