それぞれの運命
固定視点無し
レギス「…………」
ミユが敵に囚われて2日経った頃 白鴎家28代目当主である雅に呼び出しを受けて、レギスは念の為に武器を持って城へ来たのだがほぼ無言
雅「そんな無言で固くならなくていい 入ってきて」
雅に言われて部屋に入ってきたのは………
レギス「ミユ………!!」
ミユ「レギス様………!!」
部屋に入ってきたのはレギスが信用している部下であるミユ
雅「君の彼氏の部下がここに連れてきたんだ」
レギス「つまり助けたってことですか?」
雅「君の彼氏が………ね」
レギス「スウェルタが?でもスウェルタが助けたってことは………」
レギス 裏切りを………?
雅「酷く危険な状態だ 打破するには………死ぬか味方だった人を殺すかの2つに1つだ」
レギス「裏切りですか………?」
雅「そう」
雅の言葉にレギスはなんて言えばいいか分からなくなった………雅のあの目は………大切な人を失う人の目………
雅「君ならスウェルタを救えるかもしれない だから行ってくれ」
レギス「はい………!!」
雅に言われてレギスはミユと城を出て大急ぎで熊本に戻る
雅「拓哉(たくや)」
2人を見送った雅は部屋の外で待機していた孫の名を呼ぶ
拓哉「良かったのですか あのまま行かせて」
雅「俺のできることは全てやった………お前もそうだろ?拓翔(たくと)」
拓哉「拓翔?いつからいたんだ?」
ユレイト「…………」
いつからいたのか中庭の端の方に拓翔ことユレイトが立っていた
雅「まだ間に合うぞ」
ユレイト「今更もう無理ですよ 歯車はもう………動き出した」
雅「想いを伝えないのか?」
ユレイト「…………」
ユレイトはその質問に何も答えない………生まれつきの白髪である拓哉と違い拓翔は黒髪で兄とは真反対
雅「想いを言葉にする術を失くしたか」
ユレイト「貴方は俺に何を求めている?」
雅「自分で考えてみな 拓海の息子ならわかるはずだ」
ユレイト「…………」
ユレイト 貴方は人を死ぬところを見るのが本当は誰よりも嫌いだ………それこそ孫に先立たれるなど精神的ダメージは相当なものの筈………
ユレイト「貴方は表情で隠すのは上手いですが目ではどうしても隠せないようですね」
雅「お前はガルと同じことを言うんだな」
ユレイト「貴方も俺と同じ………悲しみに囚われ抜け出せない」
雅「何十世紀も共に戦地を駆け抜けて生きてきた人だったからな ジーファには俺は死んだと伝えてある」
雅 そうすることでしか護れなかった………
拓哉「拓翔」
ユレイト「兄さん ごめんね」
拓哉に呼ばれて近くまで来たユレイトは拓哉を抱きしめ呟いた………もうここには帰ってこれないことを知らせるために自分はここに来たから……
拓哉「願えることなら拓翔と一緒に暮らしていきたかった」
ユレイト「ごめん」
ユレイトと拓哉は双子でありながら生きている世界が分かれた………ユレイトは「暗殺者」として闇の世界を生き拓哉は「当主」として白鴎家で生きている………たった1度の選択で2人の生死を分けられてしまった………
ユレイト 俺ももっと一緒にいたかったよ………兄さん………ごめんね………
ユレイトはもう自分の最後が分かっていた………
スウェルタ「…………」
ユレイトが実家で兄との最後の会話をした20日後スウェルタは死にかけている男と出会う
男「お願………いだ………息……子を………」
死にかけている男にスウェルタは汚れることを構わず近くにより口元に耳を当て、男の言葉を聞き漏らさないように神経を研ぎ澄ます
男「息子………だけ………で………も…………助けて………」
スウェルタ「この子は………」
死にかけている男が腕に抱いている赤ん坊………その子はいずれ成長すれば「シューギル」(ユレイトの所属する組織)を壊滅させるであろうと言う、誰かの予言で殺さなければならなかったはずの赤ん坊………しかし母親らしき女性は殺せても父親と肝心の子供は殺せなかったらしい
男「私………達……の…希望………なんだ………」
スウェルタ「………俺も命を狙われている身だ それでもいいのならこの子供だけでも護る」
男「お願い………します」
スウェルタ この子を姉さんの元に連れていけば安全なはず………
スウェルタ「分かった必ずこの子だけでも安全な場所に送り届けるから………だからこの子が死ぬ時になったら迎えに来てやんな イイな?」
スウェルタの言葉に男は小さく頷きそのまま事切れた………幸か不幸か赤ん坊は眠っていてスウェルタが赤ん坊を抱き抱えてレギスの家へと走り出す
敵「いたぞ!!」
だが走り出して数分で敵に見つかりスウェルタは赤ん坊を護りながら行かなければならないので、至る所に発砲を受け傷だらけになりながら敵を撒いて物陰に見を潜める
スウェルタ「ゲホッゲホゲホ」
スウェルタ 昨日よりも血の量が増えてる………痛みは既に遮断してしまっているからわからないが心臓まで移転しているな………
毎日咳き込む度に増える血の量………それはもうスウェルタ自身が長くないこと意味していて……
スウェルタ だが約束した………「必ずこの子だけでも安全な場所に送り届ける」って………
自分のことよりもまず赤ん坊のことを優先するスウェルタは敵の気配を感じ早々にその場から去る
〜数時間後〜
スウェルタ「ハァ…ハァ……っ………ハァ」
数時間後 何度も敵に見つかり攻撃を受けたが何とかレギスの家の近くまでたどり着き、一時の休憩としてビルとビルの隙間の通り道に座り込む
赤ん坊「あーう!!」
スウェルタ「たく……元気だな?」
疲労困憊のスウェルタと違い元気一杯な赤ん坊にスウェルタはふと思う………
スウェルタ 俺にも子供がいたら………こんなにも可愛いのかな………
赤ん坊は無邪気で可愛くて………自分にも子供がいたらこんな感じなのかなとスウェルタは思う
スウェルタ まぁ無理な話だけど………
そう思いつつも赤ん坊の無邪気な笑顔に釣られて頬からは出血をしていたが、スウェルタは少しでも赤ん坊に現実を見させんと本来の優しい微笑みを見せる………すると喜んだのかとても可愛らしい顔をしてきたので思わずその赤ん坊が愛しく思う
スウェルタ 行くか………
念の為にスウェルタは口元まで布を上げて再び赤ん坊を抱えて走り出す………運良くてきには見つからずに付いたレギスの家のインターホンを鳴らす………するとレギスはすぐに出てきて青ざめながら家の中へ案内
レギス「怪我だらけじゃない!!」
スウェルタ「レギス 頼みがある」
レギス「え?」
スウェルタ「この子を育ててほしい 「レミーア」にとってこの子は将来組織を担う子に成長するはずだ」
焦りまくっているレギスを置いてスウェルタはまた眠ってしまった赤ん坊を差し出す
レギス「この子「不老不死」の………」
スウェルタ「この子は超強力な力を秘めてる だから護って欲しい」
スウェルタ 姉さんにしか頼めないんだ………
レギス「スウェルタ………」
スウェルタ「この子をここに届けるためにここに来た」
そう言ってフラフラな状態で玄関の方に歩いていこうとすると………伸ばされたレギスの手が口元の布に当たり布が破け隠していた頬の傷跡が顕に
レギス「………レオ………ン………?」
レギス その頬の傷跡は………
レギスはスウェルタの頬にある傷跡を見て思わずそう言って手を離してしまった………しかしスウェルタはそのまま出ていかずレギスに向き直る
スウェルタ「……やっと………気がついてくれたんだね」
レギス「レオン………なの?」
スウェルタ「そう 31年前に貴方に育てられた子供」
スウェルタ やっと気がついてくれた………
スウェルタ「気がついてくれるのを待ってた ずっと待ってたんだよ?」
レギス「レオン………」
レギスはスウェルタを抱きしめた………31年前を最後に会うことのなかった子供とこんな形でも会えた喜びで………
レギス「行くの………?」
喜びを分かちあった後スウェルタはまた玄関の方へ歩き出しレギスがそう言う
スウェルタ「俺は31年前に「護りたいモノの為に」と言って出て行った………俺が護りたいモノ………それは姉さん………貴方だよ」
靴を履き外に出る直前にスウェルタはそう言って出ていく
レギス「…………」
スウェルタが出て行った後レギスは赤ん坊を抱いて静かに泣いていた………
雅「動き出したか………」
白鴎家の1室………雅は静かにそう呟いた………運命の歯車は動き出しもう止まらない
雅「本当は父親だけは生きているのを2人とも知らない………」
そう………雅はスウェルタとユレイトが知らないことを知っていた………瑠夏と拓海は死んでいない………生きていることを………
しかし既に運命の歯車は動き出しもう止まることを知らない………
1人は命令の為に………
1人は愛する人の為に………
1人は願いを叶える為に………
1人は静かに行先を見据える………
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