逃走

固定視点なし


カルス「スウェルタ様」


レギスと会い本当のことを伝えてから1週間が経った頃………スウェルタに嫌な情報が………


カルス「レミーアの幹部の構成員を捕縛したそうです 名を「ミユ」と………」


スウェルタ「来い」


スウェルタ 「ミユ」ってレギスの側近だよな………部下かレギスを庇ったか………


スウェルタ「お前達」


部下「スウェルタ様」


スウェルタ「女相手に殴るな 情報を吐かせたいなら傷つけずにやれ」


部下「…………」


スウェルタ 案の定暴力か………


スウェルタ「仕事に戻れ」


スウェルタがそう言うと他の者はそそくさと牢から出て行きカルスにあるものを渡す


スウェルタ「9537244325413(これを使って実家にいけ)」


カルス「53239125437………(ですがスウェルタ様は………)」


スウェルタ「1395021792954329 50(俺はなんとかなるから気にするな 行け)」


2人にしか分からない言葉で会話をしカルスは別の場所へ


ミユ「う………」


スウェルタ「大丈夫か?部下共が本当に済まない」


ミユ「え?」


スウェルタは牢に入ってミユの傷を治していくが喉に激痛が………


スウェルタ「ゲホッ………ゲホゲホゲホゲホ!!!!」


ミユ「大丈夫ですか………?」


スウェルタ「………君 レギスの側近だろ?」


ミユ「何でそれを………」


暗い牢の中ではスウェルタの喀血に気がついていないらしい


スウェルタ「助けてやる カルスと逃げろ」


ミユ「敵に情けを………」


スウェルタ「お前が死んだら誰がレギスを護るんだよ」


ミユはスウェルタが敵だと思っているためにそう言ったが逆にそう言われて黙る


スウェルタ「援護してやる 後ろを歩け」


ミユ「私を逃がしたら貴方が………」


スウェルタ「良いんだよ 俺の代わりにレギスを護ってくれ」


そう言いながらスウェルタは片手にハンドガン、もう片手にサブマシンガンを持って、煙玉をその場で投げ煙が出た瞬間に走り出してミユがその後を追う


ミユ「裏切りをしていいんですか?!」


スウェルタ「いいわけないだろ」


ミユ「!?」


スウェルタ「ここの組織暗殺者のたまり場だからな

その中で上位に立っているのはユレイトだ………ユレイトが俺を殺しに来たらまず勝ち目はない」


スウェルタ だが俺を殺しにくるのはユレイトになるだろうがな………


ユレイトはスウェルタと親友である以前にスウェルタの過去を知っている………故にユレイトがスウェルタを殺しにくるのは容易に想像ができる


スウェルタ「…………」


ミユ「…………」


2人で何とか地下4階から地上1階まで付いたが囲まれていて一斉射撃は免れない


ユレイト「…………」


囲んでる中にユレイトも居て命令をするよう言われているのか静かにスウェルタを見ているが、ユレイトの目はとても儚げで今にも消えてしまいそう………


ユレイト「戻る気は無いのか?瑠伊(るい)」


スウェルタ「悪いが戻る気は無い」


きっとユレイトはスウェルタに戻って欲しかったのだ………「裏切り者」と呼ばれるよりも「仲間」としてスウェルタを呼びたかった………スウェルタの名を呼んだのは最初で最後の希望を賭けていたから……


ユレイト「…………」


スウェルタ「…………」


ユレイトはスウェルタを上から見ながら静かに手を挙げその場にいた全員が銃を構える


ユレイト「………撃て」


スウェルタ「!!」


ユレイトの言葉に全員が発砲し出しスウェルタがミユを防御しているのだがある疑問が………


スウェルタ ミユの周りに透明な防御魔法が使われている………?


ミユの周りに防御魔法が使われているのか弾が当たらない


スウェルタ「外にカルスが待機している 行け!!」


スウェルタが疑問を抱きつつもなんとか外に通じる道を作りミユを外に出す


カルス「被れ!!!!」


半ば無理矢理外に出されたミユは外で本当に待機していたカルスの力でバイクに乗せられ、無理矢理ヘルメットを被せられる


ミユ「スウェルタさんはいいの!!??」


カルス「今そんな話してる場合じゃない!!!!」


カルスとて必死………スウェルタに頼まれていなければミユを見殺しにしていた可能性だってあった………しかしスウェルタに「実家に行け」と言われたから………だから助けたい思いを押し殺してミユを自分の実家へと連れていく


カルス「飛ばすから捕まれ」


ミユ「!!」


カルスに言われて咄嗟にカルスに掴まると本当にバイクを急発進させ走行


ミユ「ねえ どこ行くの………」


カルス「俺とスウェルタ様の実家」


ミユ「同じ家なの?」


カルス「代が違うだけだ」


バイクを走らせること6時間………太陽が登った頃に漸くまともな会話が成立


ミユ「「代が違う」?」


カルス「もうすぐ県が変わる その時に話すよ」


最初の4時間に比べて大分バイクのスピードが落ちたがそれでも少し法定速度よりは早い、それでも多少の余裕は出来たのか最初のピリピリした雰囲気はほぼない


「バヂン!!」


ふとカルスの服から何かが弾ける音がしてカルスが「あっ」と言う


カルス「県に入ったから大丈夫かな」


と呟いて高速道路の近くのにあったパーキングエリアに入る


ミユ「何かが弾ける音がしたけど………」


カルス「スウェルタ様以外につけられた発信器が内部爆発起こして壊れた音だよ」


パーキングエリアにつきバイクを降りてカルスが服を脱いで確かめると、確かに発信機が2つある内の1つが破損していてもう1つはスウェルタのものらしい


カルス「「江戸時代に戻った県がある」って噂の県知ってる?」


ミユ「確か千葉県でしたよね?」


※組織の県は熊本県


カルス「白鴎家は?」


ミユ「確か1つの県を統制している何世紀もある家系だっけ?」


カルス「俺 そこの身内なんだよ」


ミユ「えっ」


つまり「カルス」という名前は本当の名ではない


カルス「スウェルタ様は28代目のご子息の息子……つまり言えばスウェルタ様は俺の生まれながらの上司であり「兄」に値する」


しかしカルスはもう1つ知っていた………ユレイトのことを………


カルス そしてユレイト様はスウェルタの父である瑠夏様の双子の弟 拓海様の息子………従兄弟関係であることも………


しかしそれは公言してはいけないこと………


カルス ユレイト様もまた同じ………


「♪♪♪」


ミユ「電話来てるよ」


カルスがユレイトの秘密を考えた瞬間を見計らったかのように電話が来てそれを取る


カルス「もしもし」


???『もしもし 華理(かりあ)か?』


カルス「兄さん………」


兄『華理だな 今どこだ』


電話をしてきたのはカルスの兄


カルス「国道でパーキングエリアに入った」


兄『うわ雅様が言ったこと完全に当たってるよ もう1人女の子もいるだろ?』


カルス「雅様は俺らとは違う次元に立ってたことあるからそう言う勘は鋭いと思うよ いる」


兄『今雅様がかなり強力な結界を張ってるけど万が一のことを考えて早めに家に来てくれ バイクは俺達が回収しておく』


兄にそう言われてカルスはミユに「急いでいくぞ」と言ってまたバイクを走らせる


〜30分後〜


ミユ「本当に江戸時代に戻った県だ………」


バイクを走らせること30分で漸く領地についたらしくバイクを降りてヘルメットを外すと………確かに街並みはドラマである江戸時代風景だし遠くには城もある


カルス「ここから先はバイクは走行できないから馬で行くよ」


ミユ「馬!!??」


カルス「そ バイクは兄さん達が回収してくれるから」


そう言ってカルスはバイクを置いてそのまま近くにあった馬小屋に入っていく


カルス「雷切(らいきり) 久しぶりだな」


その馬小屋の一番奥にいた黒い馬がカルスが可愛がっている馬なのか、カルスもの声を聞いただけで馬は嬉しそうにしている


カルス「走れるか?二人なんだけど」


カルスは馬の言ってることがわかるらしく普通に会話し先に馬に乗ってからミユを乗せる………そしてそのまま走り出し城へ到着


???「緊急事態と見た 早く入りな」


カルス「お手数お掛け致します雅様」


雅「この位お安い御用」


雅の案内でカルスとミユは城の中に入り大広間へ


雅「何かない限りはここにいた方がいい この部屋が一番結界を強化してある部屋だから」


雅は2人のことを案じそういった………



〜スウェルタ〜


雅『2人を保護した お前もその場から離れた方がいい』


時間にして6時間半………漸くカルスとミユが雅に保護されて安心したスウェルタだが………


スウェルタ「離れたいのは山々なんですが 何分身動きの取れない場所でして………」


スウェルタはカルスがバイクで去ってから3時間で組織の城から出ることは出来たが、その後に追っ手やら敵がスウェルタを狙うので今は身を潜めている最中


雅『お前も忙しいな』


雅の声は酷く冷静だが心配をされているのがわかる音調


雅『帰ってこれるなら帰ってこい』


スウェルタ「分かった」


雅『………孫にも先立たれるのは辛い』


スウェルタ「うん 分かってる」


雅はスウェルタの祖父でスウェルタも雅を尊敬しているが……先立たれるのは辛い


スウェルタ「俺も頑張って逃げられるところまで逃げるから………それでも帰ってこなかったら……」


雅『その時は分かってる 「出来るなら」って話だから』


スウェルタ「うん ………ごめん」


雅『ああ』


スウェルタ どんなに逃げても………最後に俺は死ぬ………それは雅さんも分かってる………


雅とて戦場を生き抜き戦ってきた人間………スウェルタが今どんな状況でどんな最後を迎えるのかも………姿を見ずとも理解ができる………しかし「帰ってこれるなら帰ってこい」と言ってしまうのは純粋に帰ってきて欲しいから………


スウェルタ ごめん………雅さん………きっと俺帰ってこれない………


スウェルタは静かに未だ電話の切れない雅へと涙を流した………





今は唯逃げることしか出来ない………いつか来るであろう終わりを少しでも伸ばすために………

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