第5話

 青森には相変わらず何もなかった。残暑も京都に比べれば涼しいもので、窓を開けて換気をしていると、オルガンがストッキングを脱いで涼み始める。百合も鈴蘭も毒草だが、ただ見れば綺麗な花だ。もっと大人になったら薄れるだろうか。いつか見えなくなってくれれば、スカートで出掛けることもできるだろう。ちなみに冬のスカートは制服以外却下だ。脚がしばれてかなりのデニール数のストッキングと防水のロングブーツがないと死ぬ。

 ドロレスたちは京都の地域ゾンビに無事迎えられたし、ロザリア達とは連絡先を交換した。旅行はまあ楽しかったのだろう。京都の夜はざわめきが心地よかったし、ちょっとだけ大人の気分も味わえた。芸妓のしっとりとした色気にどきりとしたりもしたが、その度に霊嬢達に笑われた。存外彼女達には自分達とは違うものが見えているのかもしれない。オルガンの傷に然り。

 と、朔哉は携帯端末で知事に電話を掛ける。

「食い扶持が一人増えたんで増給して下さい。あと2DKの部屋に引っ越したいです」

 スカートの中に扇風機の風を入れていたオルガンはぶんぶんと首を振っていたが、無視した。

 君は巣立ちが早いねえ、と言われる。そんなんじゃない。でもオソレンジャーは僕に家族を連れてきた。僕が誰かにオソレンジャーを託す時も、彼女は誰かに家族を連れて来る。そういう存在なのかもしれない。殺すだけじゃなく、与えることもできる。何と言っても宝刀なのだから。もしかしたら賽の河原から子供も連れて来るのもしないな、子宝、とも言うし。もっとも中学生の自分達にはまだまだ遠い未来の話だが。

 とりあえずオルガンには高校の修学旅行でまた京の町を見せてやろう。いつかまた着物も着せよう。

 その時は自分が、口紅を塗ってやろう。

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戦え! 恐山戦士オソレンジャー3 ぜろ @illness24

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