第2話
「お久しぶりです。朔望月朔哉」
京都の駅で迷い掛けていると声を掛けられ、振り向くとそこにいたのは真っ黒な着物に真っ黒な髪をおかっぱ頭にした少女だった。はてと見覚えのなさに首を傾げる朔哉に、かたかたとオソレンジャーが鍔を鳴らし、呼応するように少女が持っていた細長い袋が揺れる。まさか。
「薔薇十字……ロザリア?」
「ええ、そうです。そんなに変わりました?」
「服の黒さ以外変わってないところがない」
「これは外せません。喪服ですから」
随分と言葉遣いも丁寧になったのは、比叡山の躾けの賜物だろうか。白に近いぐらいだった金髪も真っ黒に染められ、長かった髪はおかっぱに切りそろえられている。喪服とは、以前言っていた親友の事だろう。ふうーん、とオルガンが頷いて彼女を見た。
「十五歳ぐらいですか?」
「はい、今年で十六になります」
化粧をきっちりとしていた頃とは全く印象が違うことに朔哉はあんぐり口を掛けるが、その肩をオソレンジャーが暴れるように揺れた。
「……比叡が恐に会いたがっているようなので、少しトイレに行ってきます」
「え。あ、ああ、頼みます」
オソレ。三大霊嬢の中ではそう呼ばれているのか。頭痛に頭を振っていると、制服の端をくいくいと掴まれて朔哉は視線を下げた。
そこにいたのは小学生ぐらいの、四つ子の少女達だった。
まさか。
「お兄さん、朔望月朔哉さん?」
「あ、うん」
「ほんとだー、ネットに出てたのとおんなじ顔してるっ! でも眼のクマはそんなでもないかな? あたし雪之丞セレス!」
「パラス!」
「ジュノー!」
「べ、ベスタです……あとこの子が」
ベスタと名乗った少女が担いでいた矢筒のような黒い革製のケースを開けられると、そこから出てきたのはオソレンジャーと同じく真っ白な髪をバレッタで止めた少女だった。
「私は高野散! あれ、比叡と恐は? さっきまで気配あったのに」
「高野! 高野ではないか!」
「恐! 比叡!」
「ふぁ……久し振り。我らみんな揃ったのって百五十年ぶりぐらい?」
眠そうにしている比叡、と呼ばれた少女は、真っ白な髪をポニーテールにしていた。
敢えてきゃっきゃとはしゃぐ三大霊嬢を無視して、朔哉はパラス達を見下ろす。
「君達は、何歳?」
「十歳、小学五年生!」
「受験勉強真っ盛り!」
「ほんとは遊んでらんないけれど、たまには息抜きだぜ、いぇいっ!」
「えと……そんな感じです」
「ほほう。私は楽隠居オルガン、まあ、オソちゃんの保護者みたいなものです。いぇい」
「いぇーいっ!」
こっちも頭が痛かった。
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