第8話 勇樹2

俺は今もずっと君を想っている。君がいなくなったあの日から。

俺は今もずっと君を探している。君がいなくなったあの時から。

俺はまだ歩み出せない、君がいなくなったあの場所へ―。


子供①『ねぇねぇ、りさちゃん!いっしょにかえろ?はいっ!』

子供②『うん!ありがとー!かえろ!』


小さな手を繋いで歩き出す子供たちを横目で見た。

一見微笑ましい映像だが、俺にはあの時の自分たちを見ているようで。

よりいっそう、気分が悪くなった。


子供③『ねぇっ!りうくん!待って・・・待ってよぅ・・・!』


背中越しにあの場所から聞こえてきた少女の声は君の声のようだったんだ。


勇「どうした?さっきの子か?」


③「ちがうの・・・さっきまでいっしょにあそんでたのに、っいなくなっちゃたぁ・・・!」


―ドクンッ―


勇「いい?もう直ぐ6時の放送が入る。それまでにここを出るんだ。そしたらきっと、

 その子にまた会える。必ずだよ。」


③「、っうん・・・!タタッ」


相変わらず急な階段からは直ぐに少女の姿は見えなくなり、

代わりに下から子供特有の高い声が二つ聞こえた。


勇「もうすぐか・・・。」


そして、あの日と変わらない無機質な声が鳴り渡った。


俺は、一つ大きく息を吸って一気に吐き、声が鳴り止むまで眼を閉じた。


声が鳴り止み、一瞬だけすべての音がなくなった時に、俺はあの時のように振り返った。


サアァァ・・・ザアァッ・・・


勇「いない、か。」


最初から、期待なんてしてなかったんだ。いや。やはり、期待なんてするもんじゃないんだ。


そんな事を考え、踵を返して歩き始めた時―。








巴「勇くんっ・・・・・・!」







聞こえた。あの日と同じ君の声が。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る